【産業天気図・自動車】「GM破産」の巨大ハリケーン発生。小康状態は一転、大荒れの予感

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海の向こうアメリカで巨大な台風が発生した。
 
 4月末のクライスラーに続き、6月1日、ゼネラル・モーターズ(GM)が連邦破産法第11条(チャプター11)を申請したのだ。日本国内では減産が一巡し、好調なハイブリッドカー中心に増産の話がぽつぽつと出始めている。雨足がようやく弱まったかという矢先に飛び込んできた、きわめて嫌なニュースだ。

幸い、この台風は日本メーカーを直撃してはいない。GMと合弁工場を持つトヨタ自動車<7203>、スズキ<7269>とも工場継続の意志を表明。デンソー<6902>、ヨロズ<7294>、アイシン精機<7259>、曙ブレーキ工業<7238>などの部品メーカーがGM、クライスラー向けに売掛債権を保有しているものの、経営危機が深刻になって以降、取引金額が減少しているケースも多いうえ、米国政府による債務保証制度への申請もしており、リスク債権はそう多くない。

とはいえ、この台風は第1波より2波、3波が怖い。

昨秋、この欄でビッグ3破たんによるリスクを4つ挙げた。
 (1) 部品供給の途絶。メーカーは通常、複数購買でリスク分散に努めているが、全てではない。「この部品はここの会社でしか作れない、ここからしか買っていない」というものが存在するのだ。代替確保できなければ、完成車の生産も止まる。
 (2) ディーラー破綻による債権回収途絶。
 (3) 失業率増加による消費マインドの一層の冷え込み。
 (4) ビッグスリーの“過剰在庫バーゲンセール”による市場混乱。

(4)についてはすでに現実のものとなっている。クライスラー破たん後の5月から、クライスラー販売店は最大6000ドル(59万円)もの大幅値引きで在庫一掃セールを開始した。そのため、クライスラーの5月の販売台数は4月より増えたほどだ(!)。今後、GM販売店が同様の行動に流れた場合、その比はクライスラーどころではないだろう。

(1)については現実化のリスクは薄れた。皮肉にもそれは、米国政府がずるずるとつなぎ融資を続けたことによるものだ。その間に、他の完成車メーカーはビッグ3比率が高いサプライヤーが作っていた部品を、他の会社にも作らせるように急いで働きかけた。その結果、「ごく数点の部品を除いてまったく問題ない」(某日系メーカー幹部)ところまでこぎつけている。

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