「マンション標準管理規約」
改正のポイントとは

国土交通省は現在、マンションの管理組合が、それぞれの管理規約を制定、変更する際の参考として作成している「マンション標準管理規約」の改正の準備を進めている。今回の改正では、役員の担い手不足などの課題に対応するために、いわゆる第三者管理者方式など専門家を活用した管理方式に係る規定なども盛り込まれるという。改正の狙いやポイントはどこにあるのか。同省の「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」座長として報告書づくりを取りまとめている、政策研究大学院大学の福井秀夫教授に聞いた。

政策研究大学院大学 教授 福井 秀夫
1981年東京大学法学部卒業後、建設省入省。大臣官房会計課補佐を経て、東京工業大学助教授、法政大学社会学部教授、ミネソタ大学政治学科客員研究員を歴任し、2001年より現職。国土交通省「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」の座長を務める

役員の担い手不足は大きな課題
外部の専門家の活用も可能に

―― 国土交通省(国交省)が「マンション標準管理規約」の改正を準備しています。かなり大きく改正されるようですが、その背景はどのような点でしょうか。

福井 大きな要因として、管理組合における役員の担い手不足の問題があります。高齢化の進展により、今後はさらに、なり手が少なくなることも予想されます。また、老朽化したマンションでは賃貸化が進み、区分所有者がそのマンションに居住していないという例も少なくありません。

現在役員になっている人も、持ち回りや抽選で仕方なくやっている人が多いのが実情ではないでしょうか。定められた任期を「大過なく」過ごすことを考えざるを得ない状況では、将来の大規模修繕や、そのための積立金不足、管理費の滞納などの問題解決に積極的に取り組むこともできないでしょう。結果としてマンション全体の資産価値を下げてしまうことになりかねません。

―― 管理組合の担い手不足の問題を「マンション標準管理規約」の改正により、どのように解決しようとしているのでしょうか。

福井 ポイントの一つに、外部の専門家の活用があります。理事長や理事、監事について、これまでは区分所有者に限定されていましたが、これを外部の専門家の就任も可としました。

前述したように、現状の管理組合は、法律や建築、財務などの専門家ではない人たちが管理者になっています。それでいて、巨額の資金管理など、きわめて重い責任を負わなければなりません。

さらに大きな課題は、管理組合自身がその責任でさまざまな業務を行わなければならないことです。たとえば、管理費を滞納している世帯に対しては、管理組合が自ら取り立てを行わなければなりません。ほとんどの理事や監事は、自分が役員の間に訴訟を起こすといった面倒なことをしたくないため、問題は先送りになってしまいます。

実は、このような管理組合のスタイルは、世界では必ずしも標準的ではありません。集合住宅では長い歴史のあるフランスやイタリアでは、管理者は管理責任を引き受けるプロに任せ、総会や理事会はこれを監督するのみであるのが一般的です。この場合、個々の業務の法的な責任は管理者が負います。

―― 管理業者など外部の専門家を活用することで、どのようなメリットがあると考えられますか。

福井 まず、利益相反取引の防止が図られます。管理者はまさに管理の総括業務に徹します。欧米では、管理者と資本関係のある企業への業務の発注が禁じられているところも多いのです。加えて、管理組合にかかる負荷が軽減されることも大きな特長です。管理者を専門家に任せる場合には、管理組合はその業者の選定と監督を行うことになります。役員になったからと、建物の構造や修繕について責任者としてのレベルであわてて勉強する必要はありません。もちろん、滞納管理費の回収などにかかる労力も軽減されます。

ちなみに、今回の改正では、管理組合が滞納者に対して取り得る各種の措置について、段階を追ってまとめたフローチャートが提示されています。利益相反や管理費の滞納に対する措置などが正しく行われれば、管理組合の資金的な余裕も生まれますし、マンション全体の資産価値も上がります。管理者に支払うフィー(手数料)も生み出せるわけです。

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