小沢氏は後年「2大政党政治の父」という歴史的評価を得られるか

小沢氏は後年「2大政党政治の父」という歴史的評価を得られるか

塩田潮

 麻生首相、鳩山民主党代表はともに元首相の孫だ。奇しくも1954年12月、政権が自由党の吉田茂氏から日本民主党の鳩山一郎氏に移った。今年、麻生首相から鳩山代表へ政権が移動すれば、孫同士による55年目の再演となる。

 55年前、悲願の政権交代の実現に鬼のような執念を発揮したのが、日本民主党の最高実力者だった三木武吉総務会長であり、新政権を党側で支えたのが岸信介幹事長(後に首相)である。三木氏は71歳の重鎮、岸氏は商工省(後の通産省)出身の元官僚で58歳の次世代リーダーだった。今の民主党の鳩山代表、小沢代表代行、岡田幹事長の布陣はこの3人の組み合わせに似ているといえなくもない。元通産官僚で55歳の岡田氏も、高い実務能力を有するなど、当時の岸幹事長と共通項が多い。
 問題は現在の鳩山代表と小沢代表代行の関係だ。「猛獣使い」と「猛獣」か、「神輿」と「神輿担ぎ」か、それとも「操り人形」と「人形使い」か。

 55年前、「稀代の策略家」の三木氏は知謀の限りを尽くして鳩山首相を生み出した。だが、政権交代にとどまらず、大型政界再編を仕掛ける。「保守結集のために鳩山が邪魔になるなら、総辞職させてもいい」と言い切って保守合同を実現した。小沢氏が今、同じ台詞を口にすれば、たちまち「傀儡」「院政」「闇将軍」と非難ごうごうだろう。三木氏が今も「自民党の産みの親」と評価を受けるのは、大仕掛けの手腕とともに、「私心、保身、野心」の「3シン」を棄て、保守結集の大義に殉じる姿勢を貫いた点が多くの人々の共感を呼んでいるからだ。

 現在の民主党でいえば、鳩山代表の「猛獣使い」の力量も重要だが、小沢氏が「3シン」を棄てて「政権交代実現」という民主主義の大義に殉じる覚悟があるかどうか。その姿勢を貫けば、「人形使い」ではなく、後年、「2大政党政治の父」という歴史的評価を得る可能性もあるが、むずかしいのは小沢氏に限らず、内心の「3シン」との闘いである。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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