割賦販売法の「総量規制」導入、教育ローンへの影響に懸念余地

拡大
縮小

門前払いの可能性も

大学に納付する学費負担は大きくなっている。ちなみに、日本政策金融公庫の調査(08年10月)によると、世帯年収に占める在学費用の比率は平均34・1%に達している。子供が首都圏などの大学に入学する場合、首都圏に在住する世帯ならまだしも、首都圏外から仕送りする世帯では、金額はさらに増加せざるをえない。自宅外通学者が1人いる世帯では年収に占める在学費用の比率は平均38・7%に上昇しているという。

貸金業法が定めた総量規制は借り手の年収の3分の1の金額をローンの上限額としている。したがって、貸金業法の対象であるノンバンクが無担保方式で教育ローンを提供する場合、他のローン利用がいっさいなくても教育ローンで門前払いされる世帯が続出しかねない。さらに割販法の包括支払可能見込額が導入されると、信販業界が個品割賦として商品化している教育ローン・学資ローンのたぐいでも、利用不可能な世帯が多数発生してもおかしくない。

ちなみに現在までのところ、信販業界と大学との提携による個品割賦形態の教育ローン・学費ローンは「包括支払可能見込額制度の例外にはなっていない」(業界関係者)。したがって、今後、この種の教育ローン・学費ローンからクラウドアウト(締め出)される世帯が潜在しているといわざるをえない。

わが国では、永らく続く超低金利の下で資産運用パフォーマンスが著しく悪化した民間の奨学金基金が、奨学金支給の対象を大幅に狭めざるをえない事態が発生している。

そのうえ、国の行政改革のあおりで国の教育ローンがしだいに狭き門となり、民間でも一連の法律改正を受けて、教育ローン・学費ローンの利用もできなくなるとすれば、今後、子供が大学に入学する予定の中低所得世帯はどうすればよいのか。

経済産業省は5月1日、割販法の細目原案を公表。「学力の教授を提供する契約」という表現で、教育ローンを総量規制の例外に置くと取れる内容を盛り込んだが、パブリックコメントを募る段階で最終決定ではない。

過剰与信、多重債務の防止は必要だが、国による制度変更の結果、従来なら利用できたローン商品が利用できなくなるという事態に対し、明確な代替策の提案はない。貸金業法の総量規制導入まで含め、制度変更によって発生するのはメリットだけではない。少なくとも、教育ローン問題には官民挙げた議論が必要だ。

(浪川 攻 =週刊東洋経済)
※写真と本文は関係ありません

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