オバマ政権もゴーサイン、「再生医療」デッドヒート

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 米国では、民主党が8年ぶりに政権を奪還したが、産業政策でも大きな「チェンジ」があった。

まずは、環境対策に背を向けてきたブッシュ前政権から、180度の転換を図った「グリーン・ニューディール」。そして派手さではやや劣るものの、前政権と明らかな違いを打ち出したのが「再生医療」だった。

3月9日、オバマ大統領は、ブッシュ前大統領が任期中拒み続けてきた書類に署名した。それはヒトのES細胞(胚性幹細胞)の研究に対する国家助成を解禁する大統領令だった。ES細胞とは以下に詳述するように、あらゆる臓器や器官・組織を作り出せる「万能細胞」を指す。

つまり、疾患によって損なわれた臓器や組織を再生して患部を治療する「再生医療」のコア技術がES細胞だ。先端医療の中でもとびきりの最先端といえる再生医療の実現に向け、米国はすでに走り始めている。

米国はES細胞研究への国家助成解禁を一大式典に仕立て上げた。日本から唯一招待されたのが、2007年11月に、新型万能細胞とも呼ばれる「iPS細胞」を世界で初めて樹立したと発表した、京都大学の山中伸弥教授だった。

iPS細胞は臓器などを作り出せる点でES細胞とほぼ同じ。ただ、ES細胞が受精卵など胎児に育ちうる卵細胞を壊して作るのに対し、iPS細胞は皮膚など体細胞から作れる点が大きく異なる。中絶問題などに敏感で、ES細胞に冷淡だったブッシュ前大統領も、iPS細胞にはそれなりの期待感を表明していた。

その山中教授は式典で思わぬ人物に遭遇した。「政権交代チームの科学者の一員としてフランシス・コリンズ博士がいた。式典のあった部屋は“ヒトゲノム会見”と同じ部屋だったと話していた」(山中教授)。

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