日本アンガーマネジメント協会

怒りと上手に付き合うための心理トレーニング

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2015年12月から常用従業員50名以上の事業所は年に1回、従業員のストレスチェックをすることを義務づけられるようになった。だが、チェックはするものの、会社として何をすればいいのかわからないと悩むマネジメント層も多いのではないだろうか。そこで注目されている一つが「アンガーマネジメント」。テレビなどでも取り上げられているキーワードだが、簡単に言えば「怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング」である。実際、アンガーマネジメントを導入する企業は増え続けているという。いったいどのような効果が期待できるのだろうか。

アンガーマネジメントは、怒りの感情を否定するものではない。怒ること自体は悪いことではないし、怒るべきことに対してはきちんと怒ったほうがいい。しかし、怒る必要のないことに怒っても何も生み出さない。怒る必要がある時も、感情的になって必要以上に怒れば自分の心情が相手に伝わらないばかりか人間関係を壊しかねない。大事なのは、怒りの感情と上手に付き合うこと。そのための心理教育、心理トレーニングをするのがアンガーマネジメントの基本だ。

考えてみれば私たちは、怒りの感情の扱い方や表現の仕方を学んだことはほとんどないのではないだろうか。そのため、怒りの感情はコントロールできると聞いても、にわかには信じがたいかもしれない。だが、米国では2000年以降、アンガーマネジメントのプログラムが急速に普及し、さまざまな分野で取り入れられてきたという。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の安藤俊介代表理事が語る。

「アスリートがメンタルトレーニングの手法として採用していることも少なくありません。試合中に完全にリラックスしてしまっては集中力が切れてしまいます。一方、感情的になりすぎても普段のパフォーマンスを発揮できません。感情の上手なコントロールが結果につながるのです」。もちろん、こうした文脈はビジネスパーソンにも当てはまる。アンガーマネジメントを理解し、トレーニングによって怒りの感情と上手に付き合うことができるようになれば、職場でのコミュニケーションにもプラスの効果が期待できるだろう。

イライラの背景にある
価値観の多様化

では、具体的にどうすればいいのだろうか。一例を挙げれば、日本アンガーマネジメント協会では「6秒ルール」を提案している。諸説あるが怒りの感情は、イラッとした瞬間から6秒間がピークで、それ以後はだんだん沈静化していくというのである。そのためイラッとしたときにはまず6秒をカウントすると気持ちが落ち着き、冷静な判断ができるようになるというわけだ。

このほかにもさまざまな技法や対処法がある。怒りという感情にきちんと向き合い、学び、トレーニングを受けることで、自分の怒りをコントロールすることを目指している。現在、そうしたアンガーマネジメントの研修を導入する企業が急増している。研修内容は企業の要望に応じて異なる場合もあるが、アンガーマネジメントについての説明、怒りの感情に対する向き合い方、怒っている人への対処法、多様な価値観の人がいる中でどう働いていけばいいのか、ということを学び、具体的な手法をトレーニングするのが基本だ。

日本アンガーマネジメント協会による研修の受講者数は、同会が活動を開始した2012年は年間8000名ほどだったが、翌年には約1万5000名、14年には5万名強と倍々ゲームの勢いで増え、15年にはついに10万名を突破した。

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