ネットブック市場がアツイ!夏モデル発表・各社の覚悟と思惑は?《それゆけ!カナモリさん》

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■ブランドと付加価値で海外ブランドと勝負

 幸いなことに、先例がある。ソニーの「バイオtype p」だ。「軽い・小さい・美しい」というコピーで売り出し、小さいにもかかわらず、優れたキータッチと、非常に質感の高い美しい仕上げで、価格はネットブックとしては破格の9万円台後半を付けた。高い。でも、売れた。

 もちろん、熱心なソニーファン、バイオファンが2台目以降のサブマシンとして購入した例もある。だが、あのバイオが9万円ならと、多くのファーストユーザーを取り込んだともいわれている。ヘビーユーザーにはCPUがAtomでは少々力不足かもしれないが、質感の良さはバイオの名に恥じない。

 各社の価格は東芝「dynabook」、富士通「FMV-BIBLO」ともに6万円台だという。シャープ「Mebius」は後述するが、野心的な付加機能で8万円前後。いずれにしても、質を上げ、ブランドネームも付加して、海外メーカーのネットブックと比べて高く売る戦略だ。

 例えば「Mebius」。先に挙げた記事によると、タッチパッド部分に同社独自デバイスである「光センサー液晶」を搭載し、タッチパッド部分にさまざまな情報や画像を表示できるほか、タッチ操作や手書き文字入力ができる、という今までにない新機能で勝負をかけている。

 想定している使用方法は、メールに手書きイラストを添付したり、写真にコメントを付けたりできるというものや、指を動かして操作するボーリングやピアノのゲームだというが、本命は、手書き文字入力を使った辞書検索機能だろう。つまり、ネットブックで電子辞書の手書き検索機能や学習ソフトと同等の機能を担おうというのだ。

 夏モデルの主戦場はネットブックと思って間違いない。付加価値を競う日本メーカー各社の戦い。価格が安い海外メーカーとの戦い。既存のメインブランドへの影響。どうなるかはまだわからないが、当面目が離せない展開であることは間違いない。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年4月24日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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