REIT市場が土壇場に、公的資金か合併再編か《不動産危機》

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 信用力が弱いほかのファンドに目を転じても、投資口価格は極めて安く、再編が加速してもおかしくはない環境だ。だが不動産価格が下落基調にあるかぎり、買い手が急ぐ必要もない。新たな資金の出し手として中国企業の存在も取りざたされるが、「要求する利回り水準は国内勢よりもさらに高い」と見る向きもある。プレイヤーがにらみ合ったままの閉塞状況が続けば、第二、第三の破綻が起こりかねない。

年金資金受け入れには内部管理強化が必要

REITは本来、年金や個人投資家に中長期の利回りを提供するのに適した商品だ。ただ年金コンサルタントのラッセル・インベストメントによると、「年金はJ‐REITよりも時価総額、流動性に優れた海外REITの組み入れを先行させてきた」。また、ある運用会社の社長は「受託責任を負う年金資金を受け入れるためには、規模拡大だけでなくガバナンスの改善が条件だ」という。

資産取得時の鑑定評価取得に関して鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけを行うなど、昨年は投資法人に対する利益相反行為や内部管理体制の不備で行政処分が相次いだ。米国や欧州などの仕組みと異なり、資産運用を外部の運用会社に行わせるJ‐REITでは、投資家の利益と相反する行為が行われる可能性が指摘されている。また「Aクラスの不動産がもっと入ってほしい」と不満を漏らす機関投資家もいる。分配金利回りが2ケタを超えるREITがごろごろする現状は異様だが、これはJ‐REITのスキームや運用に対する投資家の不信の表れとも受け止められる。資金繰り対策と同時にガバナンス改革や制度の見直しが検討される時期に来ている。

(週刊東洋経済)

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