サウジが「イラン絶縁」で迎える歴史的な岐路 米国への信頼喪失に財政難の追い打ちも

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さらには、サウジアラビアと緊密だった、米国との関係も微妙になってきた。「両国間の全面的信頼関係はもはや消えた」(保坂氏)。有事の際、湾岸戦争のように米国に安全保障を頼れるのか、との不信感が高まっている。

理由の第一は、イラン核開発協議で米国が妥協し、イランの国際社会復帰を許したこと。第二は、サウジアラビアが推進したシリアのアサド政権打倒が、米国の及び腰で挫折したことである。2013年にアサド政権軍が化学兵器を反体制派に使用したとき、米国がロシアの圧力に屈し、飛行禁止地域設定などの手段を取らなかったことが、アサド政権の延命につながったからだ。

焦るサウジアラビアは、国内外の変化に対処するため、イスラム圏で仲間集めを始めている。2015年12月には、サウジアラビアの首都リヤドに本部を置く、「イスラム軍事同盟」を結成し、34カ国が加盟。同床異夢の同盟で、軍事的実効性はないが、数を誇示することはできた。

原油価格下落によるサウジアラビアの財政難は深刻だ。2016年度予算は、2240億ドルの歳出に対して歳入は1371億ドルと、869億ドルもの赤字。ガソリンや電気・ガス、水道料金を大幅に上げる。政府内では付加価値税導入案もささやかれ出した。国民から税金を取らずにカネをバラまき、王政を支えてきたレンティア国家の基盤も揺らぐ。サウジアラビアは歴史的岐路に立っている。

「週刊東洋経済」2016年1月23日号<18日発売>「核心リポート01-2」を転載)

内田 通夫 フリージャーナリスト

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うちだ みちお / Michio Uchida

早稲田大学商学部卒。東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』の記者、編集者を歴任。

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