「ブラザー工業のTOB案」にローランドDGが大反論 DG常務「傘下に入ると営業利益が50億円下押し」
――ブラザー工業によるTOB案に当初から「ディスシナジー発生」の懸念を表明していました。その内容を改めて教えてください。
ディスシナジーの主たる内容は印刷機の中核部品に当たるインクジェットヘッドの供給に関するものだ。自社生産はしておらず、使用するヘッドの8割をサプライヤーの「A社」から調達している。残りはブラザーと別のサプライヤーからそれぞれ1割ずつ仕入れている。
A社からは戦略パートナーとして認識されており、価格面、新型ヘッドの供給、技術情報の提供と大きく3つの観点から優遇してもらってきた。とくに大きいのは3つ目の新技術に関する情報や新製品の開発状況の提供だ。これがあることで、当社は将来の製品計画を立てることができる。逆に、この情報がないと、いつ、どんな印刷機を造るかを考えることができない。
A社とブラザーは同じ部品を製造している競合だ。ブラザーの傘下に当社が入れば、これまでどおりの関係が続けられないのは当然だ。「敵」の会社に自社の最新製品を提供すれば、分解されてまねされると考えるのが普通であり、われわれが言うまでもない。
高い確率でディスシナジーが発生
――ディスシナジーの具体的な内容はこれまで伏せてきました。なぜ4月26日になって公開したのでしょうか。
ブラザーの傘下に入った場合の取引関係について、「技術支援は停止せざるをえない」などの回答がA社から得られたからだ。それにより当社が想定しているディスシナジーがかなり高い確率で起こるということの証明ができた。
もっと早く開示すべきだったという意見があることは承知している。私も正直遅いと思っている。しかし、懸念であり確証とはいえない時点で株主を迷わせることは言うべきでないと判断した。
A社から得た回答を踏まえてディスシナジーの影響度を第三者に試算してもらった。そうすると、2026年12月期時点で営業利益が50億円下押しされるとの結果だった。買収がない場合に見込める営業利益は62億円。つまり8割に相当する。
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