娘が流すSnow Manに私が「日本の未来」感じた訳 私たちが必要としている「弱者」の再定義とは?

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生活保護の不正利用を金額で見てみると全体の0.3〜0.4%だ。生活保護利用者は、理由があって働きたくても働けない人たち。気の毒な人ではあっても、悪い人たちではない。そんな私の正義、メディアや人権団体の正義は、社会の正義とズレていたのだ。ショックだった。

報告書を市長に手渡して数カ月たったある日のこと。私は友人と一緒に夕食を取っていた。となりの席に座っていたのは、若い研修医のグループだった。

彼らは小田原のジャンパー事件を引き合いにしながらこう言った。ちなみに、オプジーボとは非常に高価ながん治療薬のことである。

「小田原の話、知ってる?」

「知ってる。いつも生保のくせにオプジーボ使うなって思うんだよね」

「税金払ってないもんな。生保は生保並みの治療で我慢しろよな」

助けられているのだから、高度な医療くらい遠慮しろ、と彼らはいう。命に軽重があるのか? これが日本の医療を支える若者の声なのか? 私は怒りで震えそうになった。

「既得権のない弱者」の「既得権を持つ弱者」への怒り

だが、ふと気づく。この若者たちの声と、小田原市に寄せられた声はそっくりではないか。双方に共通するのは、弱者へのねたみと憎悪。いや、もっと正確にいうならば、「既得権のない弱者」の「既得権を持つ弱者」への怒りではないか。

朝から晩まで働き、爪に火を点すような暮らしをしている人がいる。世帯収入のピークは1990年代後半。結婚や出産、持ち家をあきらめた人も多い。彼らの目には、働かずに収入をもらえる生保利用者は、「特権的弱者」に見えているのかもしれない。

医者と聞くと富裕層をイメージする。だが、研修医の年収は平均400万円強というデータもある。夜間勤務や長時間労働に苦しみ、過労死すら起きている。そんな彼らもまた、「既得権のない弱者」だったのではないか。

次ページ「国際社会意識調査」を見てみると…
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