"普通の"元会社員ほど定年後「仕事がない」切実 シニアがいきいき働き続けられる場はどこに?

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シルバー人材センターを利用するという選択肢もあるが、就業時間の制限や会費の支払いなどさまざまな条件があり、利用を踏みとどまるケースも少なくない。近年、加入率が低迷していることも課題となっている。

業界によっては深刻な人手不足もあり、高齢者向けの求人は増えている。だが、Ⅱ層シニアの希望にマッチする仕事がほとんどない。

ここに、空洞化の問題が生じていると前田さんは指摘する。

雇用の場を生み出すのが重要

日々やることも、行くところもなく、家に閉じこもりがちになれば、体力は衰える一方。フレイル(筋力や心身の活力が低下した虚弱な状態)や認知症のリスクも高まるだろう。

そうした中、高齢者の社会参加や健康づくりにいち早く取り組んできた自治体がある。千葉県柏市だ。

同市は、高度経済成長期に東京都心のベッドタウンとして発展。地域の高齢化が急速に進む中、高齢住民の社会的孤立や孤独死への危機感を抱いていた。

そこで同市は2010年より、東京大学高齢社会総合研究機構、UR都市機構と協定を結び、「長寿社会のまちづくり」を開始。前田さんもこのプロジェクトの一員として、まちづくりの事業に携わった。

「当初は、高齢者の孤立を防ぐべく、地域にサロンや喫茶店など集まりの場を増やすべきでは、と仮説を立てていました。

しかし、実際に当事者のお話を聞いてみると、『仕事があれば明確に外出の目的が生まれる』との声が最も多かった。集まりの場よりも、雇用の場を生み出すことのほうが重要だとわかったのです。

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