TBSアナ「大谷翔平の打率読めず」一体何が問題か 知性が問われる職業は、カバーすべき分野も多い

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今回のハプニングを考えるうえで、「どの場面でミスったのか」も判断材料になる。この言い間違えが起きたのが、もしスポーツ中継だったら、擁護はできないだろう。時事ネタを扱いながらも、エンタメ仕立てに昇華している「サンジャポ」だからこそ、幸いにも、大きな炎上にはならなかった。

一方で、絶対にしてはならないシチュエーションもある。今回の打率騒動を受けて、2020年にCS放送でのプロ野球中継で行われた発言を思い出したという声も、多々見られている。

この試合では、実況担当のフジテレビアナウンサーが「ダブルアウト」と発して、解説者から「ダブルプレー」と言い直されるやりとりがあった。他にも、防御率「4.91」に対して、アナウンサーが「防御率4割9分1厘です」と発言するという、打率と混同したと思われる発言も生じた。

この様子はネット掲示板などで話題になり、SNSで拡散して、いまや「ダブルアウト」は、ある種のネットスラングになっている。野球に詳しくない筆者からしてみると、「えっ、ダブルでアウトしてるんだから、間違ってないんじゃないの?」と感じてしまうのだが、それは私がスポーツ論評を仕事にしていないから、成り立つことであろう。実況を務めるアナウンサーが不勉強だと、視聴者の気持ちも興ざめしてしまうものだ。

実況で不勉強が露呈するのと、バラエティ番組の進行で不勉強が露呈するのは、重みはまったく異なるものだろう。サンデージャポンは「ジャーナリズム・バラエティ」を銘打っており、時事ネタを扱っていながらも、あくまで軸足はエンタメに置かれている。

報道番組であれば「情報を正確に伝えること」が最重要となり、少しでも「ノイズ」になりかねない要素が加われば、批判の的になる。しかし、長年の視聴者からしてみると、サンジャポにおけるアナウンサーの役割は、「脱線しがちな爆笑問題をコントロールする」ことに重きが置かれているように感じる。事実として、爆笑問題の2人は「MC」、良原アナは「進行」としてクレジットされている。

また、サンジャポの数時間後に生放送された「爆笑問題の日曜サンデー」(TBSラジオ)では、田中さんがスタッフと「野球を知っている人間は『読めないかもしれない』と想像すらできない」と話したといい、2年先輩の山本恵里伽アナも「スポーツと関わりがあまりない場合も多い。私も同じようなミスを何度もしたことがある」と明かしていた。

「情報を伝える職業」で大事なことは?

ただ、「スポーツと関わりがあまりない場合も多い」というアナウンサー目線の意見は、視聴者に通じにくい現実もある。とくにネットでは、「何を言うか」以上に、「誰が言うか」が評価軸にされやすい。

次ページ「時事」として扱われる「大谷選手の打率」
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