「料金未納女性のゴミ屋敷」何度も片付けする事情 片付け費用を支払わず3回目の依頼をした女性

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女性:やっぱり体調が悪化してしまって、仕事も行けない状態になってしまって。いつからお支払いできますっていうのを言えない状態だったので、それだと申し訳ない気持ちもあって。でも、連絡しないのはもっといけないことだと思うので、気持ちが頭の中でぐちゃぐちゃになってしまって。それでご連絡できない状態になってしまって。

二見:どうにかちょっとずつでも支払ってもらって、また困ったときにはご連絡いただけると嬉しいですし、私たちは気持ちよく作業はさせてもらえるんで。連絡しにくくなるようなことっていうのはあまりしてほしくないです。いつでも連絡してほしいので。

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最初の片付けのときよりも、片付けようと努力する依頼者の葛藤が見えた(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)

納得はできないが、批判をしても仕方がない

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女性は二見氏と会った際、5000円を支払った。そして、23万5000円が未納のまま3回目の清掃を依頼したという。

気持ちとしてはやってあげたいが、これ以上は会社の代表として受けることはできないと判断し、二見氏は断った。この女性に批判が集まるのは二見氏も理解している。しかし、動画や記事で配信するのは、何も視聴者にこの女性を批判してほしいからではない。

「私たちが動画を配信する意味って片付けるきっかけづくりだと思うんです。水漏れで工事が入るとか引っ越しとか、それこそ私たちの動画を見たとかいろんなきっかけがあると思うんです。だから、私たちはいろんな角度からいろんなきっかけを提供し続けないといけない。

私はゴミ屋敷をゼロにしたいとか、ゴミ屋敷の住人に二度とゴミ屋敷にならないでほしいとはまったく思っていません。どうしたら部屋を片付けられるかを考えるよりも、誰かに気軽に相談をできる状況をつくるほうが、ゴミ屋敷という社会問題の解決に近づく気がしているんです」(二見氏)

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「誰かの救いになれたら」とゴミ屋敷を片付けつづけるイーブイのスタッフたち(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)

「経営」という観点で見れば、分割払いの場合は利子をつけたり、そもそもクレジットカード支払いや口座引き落としにしたりするといった対策が合理的だろう。しかし、そういった「水際対策」を講じてしまうことで、救われない人が一定数出てくる。そして、そんな人たちこそを救いたいというのが二見氏の考えだ。

「私も正直、全額払ってもらうまでは納得はできないです。でも、批判をしても仕方がない。この女性みたいな方が逃げられる場所もつくっておかないと。全員で崖に追い詰めてしまったら、もう落ちるしかないじゃないですか」

“追い詰めたら、落ちるしかなくなってしまう”

あらゆる社会問題に対して張られるセーフティーネットを考えるうえで、必要不可欠な考え方だと感じた。

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國友 公司 ルポライター

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くにとも こうじ / Kozi Kunitomo

1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライターとして活動。訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーに。そのほかの著書に『ルポ路上生活』(KADOKAWA)、『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。

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