「コスパ主義者」に感じてしまう薄っぺらさの正体 Z世代が気づいていない「コスパ志向」の弱点

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すべての意思決定において費用主義を採用する「コスパさん」は、きっとこんな生き方をしている。

「あの資格、試験勉強のコスパ悪いので切りました。やる意味ないです」

「懇親会?仲良くなるために数千円ってコスパ悪いですよね。不参加で」

「結果が不透明な新しいことするのって、コスパ悪いんじゃないかな」

これらの物言いに嫌悪感をもった方もいれば、わりと共感できるという方もいるだろう。ただ気にしないといけないのは、コスパさんは、これらの意思決定の結果として特に何も得ていないという点だ。資格も取れてないし、同僚と仲良くもなれていない。新しいことにチャレンジして得たものもない。何も払っていない代わりに何も得ていない。コスパさんは悲しいことに、成果ゼロさんでもあるのだ。

「パなきコスパ」に気をつけて

コスパ志向をのたまう人々がどこか薄っぺらい原因も、ここにある。なんでもコスパで決めているから、ほとんどの機会を放棄してしまって、結局たいした成果は得られていない。コスパは「パ」も大事なのに、コスパ主義者は「コス」ばかり気にするケチんぼなのだ。「パなきコスパ」こそ、コスパ主義の最たる弊害だといえるだろう。

コスパはとても重要な概念だ。結果的に多くの成功を収めている企業や人も、コスパを気にしていないわけがない。ただ、そういった成功の多くは、費用主義と結果主義という二つの基準をうまく使い分けているから得られるものだ。ときには「急がば回れ」の結果主義で、コスパ主義者が卒倒しそうな効率の悪い努力を重ねて、やっと得られる成果もある。そして、そういう成果ほど他者(社)にはマネできない、模倣困難なものになる可能性が高い。だって、みんなそんなコスパの悪い努力をしないのだから。

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