「コスパ主義者」に感じてしまう薄っぺらさの正体 Z世代が気づいていない「コスパ志向」の弱点

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ここで、経営学の知見を紹介したい。企業組織の成果を測定するときによく用いられるのが、効率(efficiency)と効果(effectiveness)である。「効率」は日本語での用法ほぼそのままで、わかりやすい。ある程度結果が見えていることに対して、いかに効率よく結果を得るかを重視する考え方。「コスト削減」や「カイゼン」は発想が近く、日本のものづくり企業が得意としてきた分野である。コスパも、ニュアンスはちょっと異なるものの、効率にのっとった概念であるといえる。

対して、「効果」である。これはeffectivenessの訳語で、日本語で効果と言ってしまうとかえってわかりにくいので、ここでは意訳して「結果主義」とでも表現しよう。effectivenessは、「結果的に成果が得られたのか」を気にしている。つまり効率(efficiency)と効果(effectiveness)の違いとは、「費用(コスト)主義」か「結果主義」か、という違いだといえる。

「コスパさん」は「成果ゼロさん」?

具体例を考えよう。メーカーが、自社製品の販促のためにあるキャンペーンを実施した。1回目は、まあ大成功ではないが失敗でもない。そして、2回目のキャンペーンを行うかを合議している。「このキャンペーン、コストがかかりすぎているよね」ということが主な議題になるなら、これは費用主義だ。対して、「このキャンペーン、結局どのくらい効果あったんだっけ」というのが結果主義。もちろん常にどっちが妥当であるか決めることはできず、状況によって採用される基準は異なっている。

「これだけ費用がかかるなら止めよう」となることもあるだろうし、「結果的に少しでも顧客が増えるならやりましょう」という結論も納得できる。企業や部署の置かれた局面、あるいはKPIによって、どちらを優先すべきかは異なる。しかし、コスパ重視に偏りすぎると、前者ばかりを採用してしまうことになる。

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