ドーミーインのサウナが「妙にととのう」納得の訳 ドライもロウリュもゲスト次第、顧客第一主義だ

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前編で紹介した夜鳴きそばから見えてきたのは、変わらない味を守る姿勢だった。一方サウナではゲストのニーズをしっかりと見据え、流行を取り入れるホテルと、そうではないホテルを見極めている。

ドーミーインの夜鳴きそば
前編で紹介した「夜鳴きそば」/編集部撮影

これらから見えてきたのは、徹底した顧客第一主義だ。

常にサービスの起点は「ゲストに喜んでもらう」ことにあり、喜んでもらえる限りは同じスタイルで続ける。変えたほうがさらに喜ばれると判断すれば、あっさりと変える。その判断において、価格や手間は二の次なのだ。

改めてドーミーインの経営哲学とはどんなものなのか、平山氏に尋ねてみた。

「弊社のコーポレートスローガン『よい朝のために』に集約されています。『お客様に喜んでほしい』という思いを念頭に、さまざまなサービスをどんどん増やしてきました。

それが現在、柱となっている、「清潔で心地よいお部屋」「大浴場完備」「こだわりの朝食」「夜鳴きそばを含む無料サービス」という4つのサービスです。お客様には、それら全部を体験して、ドーミーインをご評価いただきたいと思っています」(平山氏)

『天然温泉 蓮花の湯 御宿 野乃 京都七条』の朝食イメージ(提供写真)

もうひとつスローガンがある。それは、ゲストにどんなに無理難題を言われても「ノーと言わない」接遇の姿勢だ。

あからさまにできないことを言われたときも、「それはできませんが、こういうことはできます」と代案を必ず提示する。それが、サービスがどんどん増えた背景になっているのだという。

そして、「ノーと言わない」姿勢は、社内でも共通する。現場スタッフから上がってきた案に、頭ごなしに駄目だと言わない。ブランドのルールにこだわりすぎず、「こんなことができたらいい」という声を「まずやってみよう」と柔軟に取り入れる社風があるのだ。それで成功しなければ、改良する。「みんなで案を温められる土壌があります」と平山氏は胸を張る。

湯上がりどころに置かれた乳酸菌飲料。取材に同席した編集O氏は、「サウナーとして、非常にありがたいですねえ…」とつぶやいていた(提供写真)

たとえば、現在ドーミーインチェーンの大浴場で提供する、乳酸菌飲料、アイスのサービスも、元は1ホテルから始まったもの。その反響でクチコミ評価が大幅に上がり、全国のドーミーインに広がった。こちらも、「ご自由にどうぞ」というスタイルだ。

「『これ無料でいいの?』とよくお客様に言われるのですが、笑顔でご利用されるお客様の様子を見られたり、ご満足いただけているので問題ありません」(平山氏)

顧客満足度を上げるために、従業員満足度を上げる

いうまでもないが、ホテルのサービスは、そこで働く人々によって成り立っている。

昨今、労働力不足が深刻な課題となっているホテル業界。「ノー」と言わずに現場スタッフの声を取り入れることは、貴重な人材のやりがいにもつながっているのだ。さらに、離職率を減らすために、新たな取り組みもはじまっているという。

顧客満足度を上げるために、まずは従業員満足度を上げる。徹底した顧客第一主義はゲストのみならず、そこで働く人々の心も掴んでいるのだ。ドーミーインというホテルチェーンの強さは、そこにある。

笹間 聖子 フリーライター・編集者

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ささま・せいこ / Seiko Sasama

フリーライター、時々編集者。おもなジャンルはホテルビジネス、幼児教育、企業ストーリー。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界専門誌で16年間執筆を続けており、ホテルと経営者の取材経験多数。「週刊ホテルレストラン」「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」「FQ Kids」などで執筆。企業のnote発信サポーター、ブックライターとしても活動。大阪在住。

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