日本の583系も展示、動き出す台湾「鉄道博物館」 JR東から譲渡受け所蔵車に、2027年開業目指す

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一方、正門を挟んで対面に位置する「総弁公室」はアールデコ調を取り入れた建築で、2階部分は1966年にモダニズム建築で増築した経緯があり、時代の変遷を分かりやすく観察することができる。修復にあたっては、1階部分の車寄せの設計図が見つからない、主任室の調度品が取り戻せない、バリアフリーへの対処などといった多くの課題がある中で進められた。今回は1階部分が開放され、前述のDR2300の原型のレプリカ、部品のほか、同車両を題材とした映画作品を紹介した。

台湾鉄道文化研究の第一人者に聞く

オープン後が期待できる結果となった今回のプレ公開だが、初めて大人数を収容する機会だったこともあり、課題や気になる点も見えてきた。筆者は公開終了後、国家鉄道博物館籌備所の初代主任を務め、台湾の鉄道文化研究の第一人者でもある台湾師範大学地理学科の洪致文教授に話を聞いた。

洪致文教授
台湾師範大学地理学科の洪致文教授。台湾の鉄道文化研究の第一人者として知られる(筆者撮影)

――日本の鉄道関係の博物館では、完成後にスペースが足りず、新しく車両を所蔵できずに解体してしまうといった問題が起こっています。このようなケースにどう対処するのでしょうか。

日本の博物館は展示スペースが限られており、オープン当初のラインナップから変更することは難しい。一方、国家鉄道博物館は所蔵車両が70両前後なのに対し、大きな敷地を利用できるため30両ほどの予備空間を残している。さらに中央には入れ替えが可能な線路を残しており、それを運用する技術もあるので、動態保存車による乗車体験も実施予定だ。車両を搬入する際は、退役間近の車両を事前に把握し消滅の危機を防ぐと同時に、両数についても考慮し、所蔵後に一部を解体するといったことは行わないのがポリシーだ。また、展示を行うギャラリーと車両を保存するエリアに分け、テーマごとに入れ替えを行いメリハリのあるストーリー性のある展示を行えるのが魅力だ。

――展示車両については、座席の布地に穴が空くといったアクシデントも発生しました。車両や遺産に生で触れられるのは魅力であるものの、常時開放で予想されるトラブルの対策はあるのでしょうか。

今回の件は、ポケットに入れていた鍵が擦り付けられたなど、故意でない可能性が高い。気付かないうちに破損してしまうデリケートな箇所については、事前に注意を促していく。583系の内装などは修繕が難しい点もあるため、箇所によってはデッキからの見学に制限するなどしたい。また、動態車両の乗車体験などとセットで別料金とするなど、一定の制限は必要だ。

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