ジャニーズ問題で「CM起用中止の企業」に問う 「ビジネスと人権」専門家の弁護士が抱く疑問

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蔵元左近弁護士
蔵元左近弁護士(右)は「ビジネスと人権」の第一人者として活躍している。写真は7月27日の立憲民主党から、専門家としてヒアリングを受けた際のもの(記者撮影)
ジャニー喜多川氏(故人)による性加害問題をジャニーズ事務所が記者会見で認めて、1週間あまり。同事務所のタレントの広告起用をやめる企業が相次いでいる。
「ビジネスと人権」の問題に詳しい専門家の目に、この動きはどう映っているのか。元所属タレントらで結成された「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の相談にも応じている蔵元左近弁護士に聞いた。

──9月7日のジャニーズ事務所の記者会見後、雪崩を打つように企業がジャニーズタレントのCM起用をとりやめています。この動きをどうみていますか。

人権尊重を重視する姿勢を打ち出す企業が増えていることには敬意を表する。ジャニーズ事務所が適切な是正策を取るように促すプレッシャーになっていると思う。その意味では評価している。

だが、従来のリスクマネジメントやコンプライアンスの観点で、CM起用中止などを行っているように見える。「ビジネスと人権」という新しいコンセプトは従来のアプローチと違う。そこをスポンサー企業が十分に理解しているのかは疑問だ。

リスクマネジメントと目線が異なる

──ビジネスと人権の考え方では何が違うのでしょうか。

国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」や、日本政府の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」は、取引停止を「最後の手段」と位置づけている。

取引を停止すると、監視の目が行き届きにくくなるなど取引先での人権問題が、むしろ深刻になる可能性があるからだ。取引先で人権上の問題が生じた際は、それまでの取引関係で築いた影響力を適正かつ強力に行使し是正策を迫るなど、事態の改善に努めることが求められている。

ビジネスと人権の観点では、被害者から見て適切な行為を企業がとらなければならない。一方、リスクマネジメントやコンプライアンスは企業が自社を守るための論理。企業から見るか被害者から見るか。ビジネスと人権は、リスクマネジメントやコンプライアンスと視点が異なる。

アサヒグループホールディングスの勝木敦志社長は、人権問題として重く認識しCM起用中止を決めたと、朝日新聞の取材に述べていた。それが被害者にとっていいことなのか、タレントの生活基盤はどうなるのか、多面的に判断されたとは思うが、どの程度考えられたのだろうか。

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