余裕がある世界の小麦生産量
――ロシアが「黒海穀物イニシアチブ」の停止を発表したことで、今後のウクライナ情勢や世界の食糧事情に悪影響を与えるのではないかと懸念されています。
世界の穀物市場の現状をまずはみてみよう。
アメリカ農務省が7月に発表したデータでは、2023~2024年度の世界の小麦生産量は約7億9667万トンと、過去最高を予測している。2022~2023年度は7億9020万トンとなる見込みだ 。コーンも2023~2024年度の全世界生産量は12億2447万トンと過去最高の予測だ。
また2023~2024年度の世界小麦(小麦粉などの製品を含む)輸出量は2億1440万トン、世界コーン輸出は1億9826万トンと、こちらも高い水準が予測されている。
結果、世界の穀物供給は高水準かつ増加傾向にあり、価格も概ね安定している。
――ロシアのプーチン大統領は「協定によりウクライナから3280万トンもの穀物が輸出され、うち70%以上がEU(欧州連合)を含む平均所得以上の高所得国に輸出された。一方エチオピアやスーダン、ソマリア、イエメン、アフガニスタンといった国では3%以下、100万トンにも満たなかった」と主張しています。
協定は合意されてから120日ごとに更新され、現在では60日ごとに更新されている。ロシアはこれまで、更新直前になるとほぼ必ずごねてきた。今回は「停止」したが、市場では「またロシアがごねている」といった雰囲気が支配的だ。
ロシアが協定に復帰するタイミングは2つ。1つは2023年7月27日、ロシアのサンクトペテルブルクで行われたロシア・アフリカ首脳会談のタイミング。しかしここでは復帰しなかった。
もう1つのタイミングは、8月中にも行われるとみられているプーチン大統領のトルコ訪問時だ。
――トルコはこの協定において、仲介者的な重要な役割を担っていますね。
ロシアにとってはトルコが、またプーチン大統領にとっては(トルコの)エルドアン大統領が数少ない戦略的パートナーとなっているのは確かだ。例えば、2023年7月上旬にウクライナの「アゾフ大隊」指揮官5人がトルコからウクライナへ帰還した。しかしこれに対するロシアの反応は抑制的だった。
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