欧州19カ国も2020年12月に「欧州半導体イニシアチブ」を宣言し、最先端半導体の製造への投資を計画する。日本勢も負けずとラピダスが2025年までに先端半導体を試作できるように動いている。
ところで、私は現場でずっと調達の安定化に寄与するためにコンサルティングに従業している。またコロナ禍での調達難の際には、供給側への取材やヒアリングも続けた。冒頭であげた地政学的な動きのいっぽうで、どうももっと地に足の付いた報告をしたいと私は感じていた。
半導体等は納期難が緩和していると報道がある一方で、現場感覚ではまだ苦しむ企業があまりに多い。そして、その苦しみの根底には日本企業の宿痾がある。
認識されていない日本企業
ここで、話が一気に低レベルだが、しかし実態の話をしたい。
半導体メーカーの複数人に聞いてみたところ、共通した面白い話が出てきた。日本企業の多くが半導体商社経由で調達している。
それ自体が問題ではない。ただし、半導体商社経由で購入していると、エンドユーザーが誰かがまったく把握されていないケースがある、と半導体メーカーがいうのだ。
世界的に有名な日本企業のA社があるとする。彼らはティア1(一次請け)のB社(日本)から、半導体商社C社(日本)を通じてアメリカの半導体メーカーD社に注文している。D社は、直接的にはC社から注文書を受け取っている。さらにC社から急ぐように指示がある。しかしD社からしてみれば、A社につながっているとは思っていない。A社の生産を止めようとは意図しておらず、どこかの一般客に流れていくものだと考えていたようだ。
いっぽうで、ドイツ企業などは、直接的にD社へ発注していたために、”顔が見える”顧客であり優先的に対応したらしい。日本企業は多層構造を是として、あるいは当然として取引関係を構築してきた。しかしその必然性はふたたび問われるべきだろう。
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