人生100年時代に、身ひとつ軽やかに最期を迎えるための心構えを、『最期はひとり 80歳からの人生のやめどき』から一部抜粋・編集のうえ、お届けします。
何でもないとところで転ぶ
樋口:上野さんのほうはご健康は問題なく?
上野:順調に加齢しています。2022年秋、初の転倒体験をしました。樋口さんは常日頃、「つまずいて転ぶのが70代、何もないところで転ぶのが80代」とおっしゃっていましたね。
樋口:そうそう。上野さんもいよいよ転倒適齢期ですね。
上野:はい、その通りです。
樋口: 75歳からですよ。
上野:コロナ禍の間中、家にいてひきこもり生活をしていましたが、久しぶりに娑婆に出た際、新幹線の駅の上りエスカーレーターでバランスを崩して転倒しました。腰を強打して腰椎圧迫骨折、人生初体験です。これをしたらまわりのおネエさまがたから、「あら、あなたも転倒組の仲間入りね」って。皆さん私も私もって、転倒組が山のようにいらっしゃいました。わたしも順調に仲間入りしています。
樋口:転倒適齢期と申し上げていますが、その年代の高齢者が自宅周辺で転倒して死亡する例は東京都監察医務院の調査から見ましても、とても多いんですよ。
上野:転倒でどうやって死ぬんですか? 打ち所が悪くてとか?
樋口:そこが出発点です。上野さんは九死に一生を得たとまでは言わないけど、いいほうだったわね。
上野:腰椎は骨折いたしましたけれど、幸い頭を打たなかったので。頭を打っていたら大変だったと思います。パソコンの前には座れるので、「頭と口は大丈夫です」と皆さまにはお伝えしておりました。
それにしてもつらかったです。飲み薬が効かないので、座薬の鎮痛剤をつっこんで騙し騙し過ごしました。痛みはつらいし、気持ちは鬱陶しいし、落ち込むし。「テンション下がります」とある人にこぼしたら、「あなたは少々テンションが下がってるくらいがちょうどいい」って。