田中泯「映画、ドラマ作る側が国民ばかにしている」 カンヌ映画祭で男優賞を受賞した役所広司と会見
田中は、役所が「PERFECT DAYS」を、エンターテインメント映画とは対極にある、作家性の高いアート系の作品と位置付けたことに対しても、最後にもの申した。カンヌ映画祭受賞後に、役所と初めてじっくり飲んだことを明かした上で「役所さんは、たびたび『アートな映画』とおっしゃっている。僕は全然、この映画をアートだとは思わない。アートって言った時、特に日本って、反応してしまう物質がまん延している。僕は、この映画こそ普通の映画と人々に受け止めてもらいたい」と訴えた。
さらに取材陣に「皆さんが映画、映像のジャーナリズムがあるとするなら、この映画をアートにしないでください。このレベルが、アートなんて、なるわけがない。絶対に、これは、普通の映画として撮り上げて欲しい…。これこそ、人間が普通に見るべき映画と思っていただきたい」と力を込めた。これには役所も「この映画はアートではありません。人間ドラマです」と続いた。
ヴェンダース監督に「さぁ、踊って」と言われた田中泯
「PERFECT DAYS」は、ヴェンダース監督が東京・渋谷を舞台に、役所を主演に撮影した最新作で自ら脚本も担当した。製作は、22年5月に東京で開かれた会見で発表された。同監督は、世界的に活躍する16人の建築家やクリエーターがそれぞれの個性を発揮して、区内17カ所の公共トイレを新たなデザインで改修する、渋谷で20年から行われているプロジェクト「THE TOKYO TOILET」のトイレを舞台に新作を製作。そのため、11年ぶりに来日し、シナリオハンティングなどを行った。撮影は全て東京で行った。
田中は劇中で、役所が演じる東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山と奇妙なつながりを持つ、ホームレスを演じた。田中は「(役所とは)比べる必要がないくらい、俳優としてはひよっこで、まだまだ勉強中ですけど、私をダンサーとして呼んでくださった」とヴェンダース監督に感謝した。役どころについては「台本に『いる』としかかいてない。監督が『木の下に木漏れ日があるから踊ってください』と言うから『分かりました』と…即『はい本番となる』。その場で踊り…結構長く踊ったが、映画は数秒。少ししか使われてない」と笑った。
その上で、撮影について「(ヴェンダース監督が)『さぁ、踊って』と言われ、踊るのを何回もさせていただき…初めてかも知れない映画に参加する喜びは、僕の宝。役所さんとも、せりふのない交流をしたが、同じような感覚を持ったと思う」と、特別な体験だったと振り返った。
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