5月27日から2週間あまりにわたって行われた、首都高速道路1号羽田線の大師橋の架け替え工事にともなう通行止めのニュースは、筆者の予想よりもかなり大きく報道された。全国版のニュースでも、工事の概要やその影響などについて詳細に解説される場面を何度も目にしたほどだ。
それは、単なる橋の架け替えではなく、物流にも大きく影響したからだろう。
日本郵便や複数の宅配業者が、あらかじめ荷物の配送に遅延が生じる可能性についてアナウンスをしたり、都心方面からのリムジンバスが通常より所要時間が延びるため、羽田空港が早めの到着や公共交通機関の利用を呼びかけたりするなど、その影響が広範囲にわたる社会的な課題となったことが、ニュースバリューを高めたといえるだろう。
もちろん、巨大な橋桁をスライドさせるという、スケールの大きな工事そのものに注目が集まったことも見逃せない。
そして、この通行止めのさなかの5月31日、参議院で高速道路の有料期間を2065年から2115年まで延長する「改正道路整備特別措置法」が成立した。
有料期間の延長が必要なのは、老朽化した高速道路の維持・改修に多額の費用がかかることが明らかになったことが主な理由だが、まさに大師橋の架け替えは、この法律改正の必要性をストレートに国民に伝える実例の役割を果たしたといえそうだ。
ここで改めて、この法案の意味を考えてみたい。
現実離れした無料化先延ばしの期間
今年2月10日、政府は高速道路の有料期間を最長で2115年まで50年延長することを柱とした関連法の改正案を閣議決定した。開通から30年以上が経過した区間が全体の半数以上を占め、老朽化対応に多額の費用が見込まれるため、というのがその理由である。
高速道路各社がこれまで見込んでいた補修などに必要な費用5.3兆円に加え、新たに1.5兆円が必要だと発表したのが1月。それを受けるようにして、今回の延伸が閣議決定された。
高速道路に限らず、高度成長期以降に作られた日本のインフラは、相次いで老朽化の時期を迎えている。
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