「窓のサッシが足りない」注文殺到の意外な背景 やっと本格化してきた「住宅の断熱性」強化

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ここでは詳細を割愛するが、断熱性が高い住宅で暮らすことに高齢者の健康寿命を延ばす効果がある、などといった研究成果が見られるようになってきた。将来的にさらなる医療・介護の負担増大が懸念される中で、住まいの断熱性強化はそれらへの負担軽減への予防効果が期待される。

これまで住宅関連事業者だけで言われてきた住宅断熱の必要性が、医療や介護など、より幅広い人たちの理解を得ようとしており、これは以前とはまったく異なる状況だ。だからこそ、国は今回、大規模なキャンペーンを展開できたともいえる。

住設メーカーも断熱化に注力

住宅関連事業者だけを見てもそれが言える。前述したLIXILでは断熱性能に特化したショールーム「住まいStudio」を東京と大阪に設置。冷蔵施設の中に断熱性能などが異なる部屋がある大がかりなものだ。

「住まいStudio大阪」の内部の様子。冷蔵施設の中に断熱仕様が異なる部屋が設けられている(筆者撮影)

窓による断熱効果の違いが具体的であることに加え、遮音性や省エネ、それによる光熱費削減といった副次的な効果があることも、ショールーム見学を通じて理解できる、非常に充実した内容となっている。

今回、住宅断熱について紹介するキッカケとなったのは大阪のショールームを見学したからだが、同種の施設はこれまで大手ハウスメーカーなど一部の住宅事業者が新築住宅向けに設けていたものしかなかった。

つまり、住宅関連事業者でさえも従来は断熱効果や魅力を十分に伝え切れていなかったわけだ。こうした施設により断熱性強化の効果をより積極的に浸透させようという動きが広がりつつあることに社会的要請の高まりが感じ取れる。

冒頭に窓断熱には50年ほどの歴史がある旨書いたが、補助金など国の施策だけでなく、ハウスメーカーやリフォーム事業者、住設メーカー、さらにはそれを取り巻くさまざまな関係者を巻き込むかたちで、住宅の断熱はようやく本格的な日の目を見ようとしている。

この機運を逃せば今後、日本において住宅の断熱化という住まいの本質的な部分の改善を実現できないのではないか、それくらいの危機感が国や住宅関連事業者にはあっていいのではないかとすら、筆者は考えている。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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