まもなく発射命令?北朝鮮の「軍事偵察衛星」とは 7~10月の国家的行事日での発射が有力視されているが…
北朝鮮の最高指導者である金正恩・朝鮮労働党総書記は、いつ「軍事偵察衛星1号機」の発射命令を下すのか。発射が成功すれば、これまで相次いで弾道ミサイルを発射してきた北朝鮮がついに宇宙空間にまで存在感を示すことになりそうだ。
2023年5月16日、金総書記が、製作された軍事偵察衛星を視察し、「その後の行動計画」を承認したと、北朝鮮の朝鮮中央通信が同月17日に報道した。この日、金総書記は衛星の組み立てやロケットへの搭載準備といった状況を視察したようだ。名前を「キム・ジュエ」とする金総書記の実の娘も同行している様子を撮影した写真も公開されている。
では、いつ金総書記が発射命令を出しそうか。これに先立つ2022年12月18日、北朝鮮の国家宇宙開発局は「偵察衛星を開発するための最終段階の重要な実験を行った」と発表した。このとき、「2023年4月までに軍事偵察衛星1号機の準備を終える」とされていた。
技術準備・天候が合えばいつでも発射か
実際に金総書記は2023年4月18日に国家宇宙開発局を訪問したため、「4月中の発射か」と観測が強まったが、結局、4月は過ぎてしまった。
現段階で発射の可能性が高いと予想される時期がある。まず、7月27日の朝鮮戦争停戦日だ。北朝鮮ではこの日を「祖国解放戦争勝利記念日」としている。次に9月9日の朝鮮民主主義人民共和国創建記念日。さらに、10月10日の朝鮮労働党創建記念日がある。これらの節目を前後して発射するのではないかとの見方が優勢だ。
一方で、こうした記念日に関係なく、技術的な準備が完了し、かつ天候が発射にふさわしいと判断されれば、すぐにでも発射するのではないかという見方もある。もともと北朝鮮は中期的な計画を綿密に立て、その中に弾道ミサイルの開発や発射時期を折り込んで実行に移す。となれば、こうした記念日に合わせるというよりは、それとはそれほど関係なく本来の計画に沿って発射を行う可能性も十分に高い。
発射地点は北朝鮮北西部・平安北道東倉(トンチャン)里の西海衛星発射場だろう。すでにアメリカのVOA放送や北朝鮮専門サイト「38ノース」などが、衛星写真の分析から発射現場に発射台が立てられるなどの動きがあることを報道している。
発射される衛星はどのようなものなのか。朝鮮中央通信が5月17日に報道した写真を基に、高さは1~1.2メートル程度、重量は300~500キログラム程度の小型の衛星と、韓国の専門家は判断している。
偵察能力の精度を測る「解像度」については地上の4メートルぐらいの大きさの物を判別できる程度との指摘が多い。アメリカの軍事衛星の解像度は15センチメートルとされるので、それからすれば精度はかなり低いことになる。
北朝鮮は、2021年1月に開催された朝鮮労働党第8回党大会で、金総書記が「軍事偵察衛星の設計を完成した」と述べてから、その進捗度合いが注目を集めてきた。北朝鮮はこれまで、軍事よりは気象衛星などの民生用の衛星打ち上げに言及し、実際に衛星を発射してきた。
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