増える70歳以上のシニア破産、身近な転落の経路 現役時は乗り切っても、人生の終盤に落とし穴

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サラリーマン生活を過ごしてきたシニアには、定年時に退職金という資産が手に入る。厚労省の調査では大卒のモデル退職金額は2563万9000円(令和2年度・調査対象=資本金5億円以上の大企業92社)となっている。従業員300人未満の中小企業は東京都調査で1091万8000円(令和3年・調査対象276社)だった。

注意すべきは、定年退職後にスタートする年金生活において、退職金が満額残せるとは限らないことだ。筆者の知人のファイナンシャルプランナーがこう指摘する。

「退職時までに住宅ローンを完済している人がどれだけいるでしょうか。ある大手建設企業の管理職だった方は、3000万円の退職金のうち1200万円は住宅ローンの繰り上げ返済に充て、実質1800万円で年金生活に入りました。この方は大企業で退職金額も恵まれていたからまだいいのですが、中小企業勤務の方が1000万円を住宅ローンの完済に充てれば、残りはほとんどなくなってしまうこともあります。40代以降になって億ションのような高額物件を35年ローンで購入した人たちは、定年時にもローンがかなり残っている点に留意するべきです」

現役時の感覚で暮らし続けると…

また、年金生活に突入したにもかかわらず、生活水準を落とせないパターンもよくあるという。週末のゴルフや友人との会食など、現役時代は会社の経費でまかなえたものもあっただろうが、組織を離れればそうはいかない。すべて自腹である。時間ができたからと毎週のようにゴルフや付き合いをしていれば、毎月の「不足額」はどんどん膨らんでいく。毎月の赤字が10万円とすれば年間120万円、10年間では1200万円にもなる。10年後に退職金はどれだけ残っているだろうか。

定年を迎える段階で住宅ローン以外の借金を抱え込んでいるケースも少なからずある。

「子どもの教育費やふだんの贅沢な生活のため銀行カードローンなどに手を出していた人、高齢の親の介護が長期化し、家計の資金繰りが苦しく多重債務に陥っていて退職金はその返済に充てざるを得なかった人などがいます。その結果、退職後に住宅ローンが残ってしまったケースがあります。

また、退職金対象者にはさまざまな誘惑が待ち構えています。マンション投資や株、投資信託、高級車、海外クルーズツアーなどです。これらに資金を回して、結局は大きく目減りさせてしまう人も少なくありません」(前出のファイナンシャルプランナー)

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