台湾新幹線「新型車」日立・東芝連合受注の全内幕 難航した価格交渉、どう折り合いをつけた?

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一方で、高鉄は国の関与が強いとはいえ民間企業であり、そのような開示をしない。そのため、高鉄側の想定している価格がメーカーにわからない。そのため、メーカーは高鉄が示した仕様に則り、さまざまなコストを積み上げて入札価格を決めるしかない。

高鉄は第1回、第2回の入札でなぜメーカーが提示した価格を高いと考えたのか。たとえば、日本におけるN700Sの1編成当たりの価格を参考にしたのかもしれない。JR東海はその価格を公表していないものの、2020〜2022年度に導入した40編成について補修費用などを含めた工事費について2400億円と発表しており、1編成当たりに直せば60億円と推測できる。また、高鉄には2015年に導入した700Tの価格が1編成当たり16.5億台湾ドル(約71億円)という実績もある。これも参考指標になったかもしれない。

今回、高鉄が日立・東芝連合に発注する価格は12編成で1240億9100万円。1編成当たりでは103億円になる。

N700Sより割高になる要因

ではなぜ、N700Sの価格と今回の発注価格にこれほどの価格差があるのか。N700Sには本来の16両編成から基本設計を変更することなく、8両、12両といった短い編成に変更することが可能だ。この特性を活用すれば、1編成当たりの車両数が少ない分だけ安くなってもいいように思えるが、そのメリットを生かしてもなお、割高になる要因があった。

N700S 8両編成
N700Sは基本設計を変更せずに8両編成や12両編成にすることができる(撮影:尾形文繁)

要因の1つは購入するのがJR東海ではなく、高鉄だという点だ。東海道新幹線の場合、車両を製造するのはメーカーだが、開発にかかわるプロジェクトマネジメントや品質管理などの業務はJR東海が行っている。車両に使われる電気機器など主要な構成要素はJR東海が選定し、単品での性能確認はもとより、ほかの構成要素と問題なく調和するかなどの確認もJR東海が行う。これらに要する人件費などの費用は、JR東海が購入する車両価格には含まれていない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げ。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に定年退職後の現在は鉄道業界を中心に社内外の媒体で執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京交通短期大学特別教養講座講師。休日は東京都観光ボランティアとしても活動。

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