2つの「東京オリ・パラ」がもたらした「ストーリー」 「近未来日本」を見通すヒストリーという武器
手が届きそうな近い将来はどんな時代になるのだろうか。メディアの公共性を担保するのは誰か、マーケットデザイン思考を「利他」的に援用できるか。1964年と2021年の東京オリンピックとパラリンピック、1970年と2025年の大阪万博をめぐる政治と当事者の歴史をどう読み解くか。都市空間をいかに「演出」していくのか。牧原出、安田洋祐、西田亮介、稲泉連、村井良太、饗庭伸の各氏による都市計画、経済学、社会学、メディア、政治学のジャンルを横断する野心的論考『「2030年日本」のストーリー:武器としての社会科学・歴史・イベント』がこのほど上梓された。
今回は同書の共著者の一人、村井良太氏が、東京オリンピック・パラリンピック以後の視点から2030年の日本を考える。
東京オリンピック・パラリンピック2021の後で
未来を見通すことがいかに難しいか。それはここ数年の私たちの実感するところである。
1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災など相次ぐ震災や毎年のような豪雨災害は地域的であったが、2020年には新型コロナのパンデミックによって、ある日、全国で学校が一斉休校になり、目前に控えたオリンピック・パラリンピックは延期された。
ほぼ無観客で行われた1年後のオリパラ実施後にも変化は止まらない。2022年2月には国連安保理常任理事国のロシアがウクライナに武力侵攻した。それは近隣の安全保障環境への懸念とも相まって日本の政策の変化にもつながっていく。
2022年末、「国家安全保障戦略」など、いわゆる安全保障3文書が閣議決定され、戦後日本の安全保障政策の大転換だと言われた。それは主力戦車のウクライナ供与を決めたドイツの動向とともに世界的な注目を集めている。日本の「戦後」は終わるのか。すでに新たな「戦前」に入っているのか。そんな議論も聞こえてくる今日この頃である。
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