アリストテレスの教えを基に「思考の本質」に迫る 『賢い人の秘密』書評

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クレイグ・アダムス 著『賢い人の秘密 天才アリストテレスが史上最も偉大な王に教えた「6つの知恵」』
賢い人の秘密 天才アリストテレスが史上最も偉大な王に教えた「6つの知恵」(クレイグ・アダムス 著/池田真弥子 訳/文響社/1848円/344ページ)
[著者プロフィル]Craig Adams 英オックスフォード大学で言語学と現代語を学ぶ。ノンフィクションの編集者として出版社で働いた後、教職に就いた。しかし、学生にいちばん大切なアイデアを伝えないカリキュラムに幻滅し、本書執筆のため教職を離れた。

オーソドックスな啓蒙書である。日常の会話、議論、考察、論考などさまざまな知的営為の根底に潜んでいるパターンを「アリストテレスの設計図に従って分解」していく、との宣言から始まる本書は、思考の本質を解き明かそうとする試みだ。

6つのポイントを提示

多くの学問分野の基礎を築き「万学の祖」と呼ばれるアリストテレスだが、彼は普遍的な思考の技術を見いだすとともに、各分野が独自の論理構造を生むことを認識していた。例えば法学は演繹的な思考を育み、医学は帰納的な思考を重視する。「隠れた前提を探せ」とは、アリストテレスが繰り返した教えの1つだという。さまざまな学問分野のメタレベルの論理構造を感知しておくことは、議論の迷走を避けるための基本だろう。

著者は人間の知性が「諸刃の剣」であると表明したうえで、「メタ」認知の重要性を語る。さらに、演繹、帰納、類推、実体、意味、証拠という6つのポイントを提示する。

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