「Chat GPTが雇用を奪う」と考える人に欠けた視点 AIは世界をオートフォーメーション化しうるか

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AIの未来
AIの発展によって起こっているのは、雇用の喪失ではなく……(写真:World Image/PIXTA)
AIの登場によって人の雇用の機会が奪われると言われて久しい。最近では、Chat GPTの運用開始も大きな話題を呼んでいる。果たして、このような文明の発展が人類にもたらすのは、幸福で豊かな世界なのか、それともディストピアなのか。世界的に注目を集める社会理論家、アーロン・ベナナフの新著『オートメーションと労働の未来』を監訳した経済学者の佐々木隆治氏が、世界経済の動向、そしてAIが社会を変える可能性について語る。

AIは人の雇用を奪ってしまうのか

最近はDeepLやChat GPTのように、言語処理に長けたAIが次々と登場してきています。私のような大学教員としては「レポート試験に使えてしまうのでは?」ということが気になってしまうくらい画期的なAIだと思いますが、とはいえ、このような流れがオートメーション化を加速させ、雇用が喪失してしまうかというと、そんなことはないと思います。

たとえば、10年ほど前には自動運転技術が実用化されるのも近いと言われていましたが、いまだに完全な自動運転からはほど遠い状態にあります。最近もフォードとフォルクスワーゲンが出資していた「アルゴAI(Argo AI)」が自動運転の開発から撤退しましたね。

あるいは、卵を割るとか、ドアを開けるとか、人間には簡単にできることが、なかなかロボットにはできない。総じて、いまのAIやIT技術で雇用を置き換えるほどのブレイクスルーがあるのかと問われれば、その影響は非常に限定的だと答えます。

AIによる雇用崩壊論が言われ出してから10年以上がたち、その誤りが明白になったというのが現在だと思います。むしろ、近年注目されるようになってきているのは、オートメーション化というよりも、ビッグデータと機械学習によって生み出されるアルゴリズムの危険性です。

つまり、雇用の喪失ではなく、アルゴリズムによる行動予測や行動修正が人々の意思形成を歪めたり、既存の差別意識などを再生産することが深刻な問題になっているのです。

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