前頭葉は、人間の脳の中で最も早く老化が始まる部位であり、早い人の場合は40代から萎縮が目立ち始めます。すると、明らかに意欲や創造性が減っていきます。50代、60代になると、本格的に前頭葉の機能が落ちていきますが、その結果、衰えやすいのが、感情を制御する能力です。
60代くらいから、急に怒り出すという人が増えるのは、前頭葉の萎縮によって感情の抑制ができなくなってしまうからです。
また、この時期には「性格の先鋭化」と呼ばれる現象も起こります。これは、怒りっぽい人がより怒りっぽくなったり、疑い深い人がより疑い深くなったり、頑固な人がもっと偏屈になったり、優しい人がより優しくなったりする現象です。
よくいわれる「キレる高齢者」「困った老人問題」は、この性格の先鋭化が原因となっているものも多いでしょう。
加齢で適応能力も低下していく
前頭葉が衰えることで、感情のコントロールや意欲、創造性が低下するだけではなく、新しい情報や考え方に対する柔軟性が失われていく傾向もあります。
年齢を重ねると、つい保守的な行動をとりがちになります。たとえば、「昔からやってきたやり方を変えられない」「住み慣れた場所から離れて、別の場所に行くのが憂鬱」「いつも食べている料理以外のものに挑戦するのが億劫」など、新しい挑戦を大きな負担に感じてしまうのです。
若手社員からのアイデアを年配の社員が「そんなんじゃうまくいくわけない」「そのやり方では通用しない」などと頭ごなしに否定したりするのは、こうした柔軟性の欠如がもたらす現象ではないかと私は思います。
政治の主義主張などにしても、中年くらいまでは極左だった人が極右に主義を変更する、もしくはその逆も起こりえますが、60代以降になって前頭葉が本格的に衰えてきた頃であれば、そうした主義主張が極端に変わることはあまり起こりません。
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