60代以降は、身体的な理由だけではなく社会的な変化も生まれます。多くの人は60歳、もしくは65歳で定年を迎え、会社という居場所がなくなります。この先、「70歳定年」が定着するのではともいわれていますが、60代になると嘱託社員などになり待遇が変わることも多いため、一部のエリート管理職や役員の候補以外は、50代までとは働く環境も大きく変わるにちがいありません。
また、60代は、子どもが成長して親元を離れていく人も多いと思います。これも一つの喪失体験でしょう。
さらに60代で直面するのが、親の介護です。昔は60代の時点で親が亡くなっていることが多かったものの、医学の進歩により、現代では60代ぐらいから80代、90代の親の介護が始まることも多々あります。こうした介護の負担が、60代以降も続くことが、メンタルや体に良くない影響を与えることもあります。
このように60代くらいから、体や環境には大きな変化が生まれるため、心に不安や疲れがたまり、「最近、物忘れが増えた」「急に気分が憂鬱になる」「よく眠れない」といった諸症状が現れ、ついにはうつ病になってしまいます。
60代になると心の問題が起こりやすくなると知っている人は、冷静に対処できるでしょうが、その知識を知らずに症状が現れると、多くの人はパニックになって、事態が悪化することも多いです。
だからこそ、「年を取るにつれて、心身に変化が起こるのは当たり前のことだ」と知っておくだけで、これまでなかった変化にも冷静に対処できます。
60代以降、注意したいのは「感情の制御」
そのほか、年齢を重ねた末に起こりやすい代表的な現象として、覚えておきたいのは「怒りのコントロールが悪くなる」ことです。
この変化には、脳にある前頭葉という部位が大きくかかわっています。「大脳皮質」と呼ばれる人間の脳の表面のうち、41%を占めるのが前頭葉と呼ばれる部位です。あらゆる生物のなかで、ここまで前頭葉が発達しているのは人間だけです。そのため、さまざまな「人間らしい機能」を担う部位ともいえるのです。
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