助けあえない日本人女性、「分断」が進んだ背景 他国に比べて女性間の連帯が弱いのはなぜか

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「ネオリベラリズムのもとでは、誰もが資本家の立場になり、起業する、あるいはスキルアップによって高い給料とキャリアを得ることが人間の幸せで目標だと思い込まされる。個人がバラバラにされて連帯できないから、社会も見えなくなるのです」

多忙な毎日を送る正社員の女性たちは、疲弊していて運動を起こす、連帯する余裕がそもそもない。一方、非正規雇用で家庭責任を背負わされる女性たちは、正社員の女性より差別的な待遇を受けているにもかかわらず、フェミニズム・ムーブメントは自分には関係がないと考えている。それは、地位向上が彼女たちにとっては現実味がなさすぎ、夢を描くことすら自分自身で封印しているからだ。

女性が女性を叩くことを促してきた

そうしたより劣悪な立場に置かれながら、差別解消を求めない女性たちについて、菊地准教授は、「もし、声を上げた人を助けよう、という意識や文化が社会に根づいていれば、そういう人たちも声に出せる。運動するに至らなくても、人に相談する、グチを言う可能性もあるのですが、日本ではそもそも声を上げちゃいけない、という風潮がある。わきまえることが女性らしさと言われてしまっているので、声を上げるなんてとてもできないのです」と説明する。

連帯を困難にする元凶が、自民党政権にあると指摘する菊地准教授は、「伊藤詩織さんに対して杉田水脈議員がバッシングする。今回の統一教会問題でわかりやすく出てきていますが、保守政治の根本には、『国家の基本は家庭にあり、女性は性別役割分業で家にいて子どもを産め』という家族観があります。しかし最近は少子化で労働力不足だから、家庭責任を背負ったうえで、外でも仕事をしてもらうと主張するのが自民党です」と説明する。

最高裁で2015年、2021年と2度合憲とする判決が出たこともあり、ここ5年ほど、メディアでも選択的夫婦別姓制度を巡る議論が活発だ。

「リベラルな人たちの中には、『なぜ誰にも迷惑がかからないのに、自民党は選択的夫婦別姓制度を実現させないのだ』と言う人がいますが、私から言わせればその認識自体が甘いと菊地准教授。「男性が中心にいて、女性はそれを補佐する仕組みを壊すと国が壊れる、と思っている自民党が夫婦別姓を認めないのは当然で、実現させたければ政権交代しかないんです」。

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