[Book Review 今週のラインナップ]
・『経済学のどこが問題なのか』
・『ファミリー企業の戦略原理 継続と革新の連鎖』
・『国民安全保障国家論 世界は自ら助くる者を助く』
[新書紹介 3分で4冊!サミングアップ]
・『「プランB」の教科書』
・『「パンセ」で極める人間学』
・『世界はさわらないとわからない』
・『50歳からの科学的 「筋肉トレーニング」』
評者・東京外国語大学教授 中山智香子
ケインズ研究の泰斗が、経済学を学ぶ学生や、経済学に関心、疑問を持つ一般の人々向けに経済学のあり方を問い直した書だ。その原動力は2007〜08年の金融危機を予見できなかった経済学への自責の念で、主旋律はその後も変わらずに教えられている「主流派経済学」への批判である。
「またそれか」と既視感を覚える読者もいるだろうか。そうした読者は、ぜひ、英国のセンター・フォー・グローバルスタディーズのサイト、特に著者が率いる「経済学のカリキュラム」を見てほしい。
目的は貧困の廃絶 経済学を諦めない
そこでは、経済学を変革する世界各地での取り組みが紹介されている。本書が学者の机上の空論ではなく、大学生や修士課程大学院生らとのひたむきな協働に裏打ちされていることがわかるだろう。序文には本書に大きく貢献した学生の言葉の長い引用もある。
著者によれば経済学の唯一の正当な目的は、貧困の廃絶で、そのためには規範、倫理的側面が経済学に求められる。この点から、ごく最近の諸理論まで踏まえつつ、合理性を軸として科学性やモデルを追究してきた諸派を「人間の本性の捏造」と批判する。
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