「日本の牙城」ジャカルタ鉄道に迫る欧州勢の脅威 スイスと合弁の国内メーカー製新車導入が決定
1000両以上の日本の中古車両が在籍し、日本の鉄道海外ビジネスにおいて東南アジア最大規模のマーケットとも目されている国営インドネシア通勤鉄道(KCI)で、ついに欧州勢力による反撃が始まろうとしている。
5月9日、国営インドネシア通勤鉄道(KCI)は、国営車両製造会社(INKA)との間で、ジャカルタ首都圏向け国産新型電車12両編成16本192両の導入に関わる覚書に調印した。製造はスイス・シュタドラーとINKAの合弁会社、シュタドラーINKAインドネシア(SII)が請け負う。
新型車両は欧州規格
KCIに対する新型車両導入議論は今に始まった話ではない。KCIは2018年3月に新車導入に関する実現可能性調査のコンサルタント入札を公示した。中古車両は2007年10月の財務大臣令にて輸入禁止が定められているが、それ以降もKCIは工業省および商業省に免除処置を申請することで、特例として中古車両を導入してきた。
しかし、国営企業省が中心となり、2020年で中古車両の輸入特例を失効させる方針を示した。新型車両導入に関するコンサルタントの入札は、この政府方針に対応したものである。
この時点で新車が国産車になるのか、それとも輸入車になるのかは明文化されていなかったものの、国内入札の体裁を取っていたことから、応じられるのはINKAとその子会社以外に存在しないとみられていた。
入札以降の動きは非公開で進められたため、はたしてどこが落札したのかは定かではないが、2019年8月にINKAが単独で、現在のジャカルタ・スカルノハッタ空港線向け車両(ボンバルディアと共同受注)をベースに、4ドア通勤タイプとした車両の提案を実施しているのが確認されている。これは設計思想的には日本の車両に近く、電機品などには日本製品の採用も視野に入れていたようだ。
だが、今回導入が決まったのは、シュタドラー主導で設計された、欧州規格(EN)を全面的に採用した車両である。
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