──日本の大学に悲観的な見方です。
中国のような海外の大学に優れた研究者が流出する現象は、このままでは今後間違いなく顕在化してきます。今、日本の大学と研究者の置かれている環境があまりにも悲惨だから。給料が安い、研究費も乏しい。雑用が多く、研究と教育に没頭できない。この惨状が変わらない限りは、南方科技大学にいる日本人教授に限らず、中国に流出する研究者はこれから何人も出るでしょうね。能力と意欲のある日本人研究者なら、今中国に行けば桁違いの研究費が提示されるのだから。これについて、日本は強烈な危機感を持つべきです。
大学の現場の声がほとんど反映されなくなっている
──現状を招いた原因は。
端的に言うと、内閣府とその下の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)がダメにしている。政治主導で、トップダウンで何もかもコントロールしようとしている。教育と研究をめぐる議論に、大学の現場の声がほとんど反映されなくなっているのです。
私自身、政府のある会議に出たことがあります。議論の内容は事前の根回しですべて決まっており、反対意見を言っても議事録に残りすらしなかった。出席者の中には、学術界を代表して果敢に意見を言う先生がいたが、完全にスルーされていました。また日本経済団体連合会(経団連)も、「今の大学は産業に役立っていない。産業界の意向をくんだプログラムを導入し、教員を変えなければならない」として、政治を通して大学教育に大きな圧力をかけている。大学の現場からの意見は、政治にも産業界にも、根本的に信用されていないのでしょうね。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら