「アストラゼネカの血栓」怖がる人が知らない事実 「2回目はmRNAワクチン」がなぜできないのか?
単純計算で比較してみると、新型コロナ感染者が血栓症を発症する割合(1.86%)は、英国のアストラゼネカ接種者の血栓症リスクの12.9倍、台湾のアストラゼネカ接種者の血栓症リスクの44.3倍だ。
かかった場合の血栓症リスクに比べたら、接種後の血栓症リスクは“怖がる”ほどのものだろうか。
しかも新型コロナにかかってしまえば、ウイルスが体内に広がり、肺炎やもっと別の合併症も次々と続きかねない。ワクチンならば、全身がウイルスに蝕まれていくことは絶対にない。この大きな違いを、どうか頭に置いておいていただきたい。
アジアで年齢制限のない事情
こうしたことを踏まえ、すでにアストラゼネカワクチンを導入している欧米諸国では、血栓症が問題となった後も年齢制限を設けて接種を継続しているところが多い。
英国も例外ではなく、政府は40歳以上を推奨対象とした。日本はこれに倣ったかたちだ。
欧州疾病予防管理センター(ECDC)のまとめ(6月14日時点)によれば、欧州中10カ国では薬事承認どおり対象を18歳以上としている。他方、18カ国では接種を中高年に限り、デンマークなど5カ国ではアストラゼネカの接種をそもそも行っていないか、停止している。
制限年齢を詳しく見ると、線引きとして最も多いのは60歳以上で、ドイツなど8カ国。次いで50歳以上が4カ国、55歳以上3カ国と続く。最も高年齢の設定(厳しい制限)はポーランドの69歳以上で、最も低年齢(緩い制限)はギリシャの30歳以上だ。
もちろん単に年齢で分けるだけでなく、血栓リスクや血小板既往者を除くほか、2回目接種はmRNAワクチンで行うことを定めた国もある。
アジアでは、台湾を含むほとんどの国はアストラゼネカに関して特段の制限は設けていない。韓国のみ推奨年齢を50歳以上としているが、8月17日からは30歳以上の希望者にも残余ワクチンの接種が解禁された(ワウコリア)。
アジア各国でも台湾と同様、血管症リスクが相対的に低いのかどうかは不明だ。むしろmRNAワクチンが十分ではないために、多少の血栓症リスクは問題にしていられないのだろう。若年層であっても、感染のデメリットと比べればアストラゼネカワクチン接種を採る、ということだ。
「かかるよりマシ」――ワクチンで万が一起きるかもしれない何かを心配するより、ワクチンを打たずに新型コロナにかかってしまったときのことを心配して備える。そのほうが明らかに合理的で賢明なことは、おわかりいただけると思う。
再び欧州のアストラゼネカ接種方針に目を向けると、ポイントは、2回目接種をmRNAワクチンとしている国が少なくない点だ。
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