トランプ大統領の敵は中国でもイランでもない 米中貿易戦争やイラン攻撃の裏にある「真実」
今年1月、英国の名門であるロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)で、シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授が以下の興味深い話をしていた。いうまでもないが、教授は自身がウエストポイント(陸軍士官学校)出身であり、現在外交軍事が専門の「リアリスト系政治学者」としては第一人者である。重要なので引用する。
「2001年9月の同時多発テロの後、アメリカは直ちにアフガニスタンに宣戦布告した。同12月にはタリバンを放逐しほぼ全域を沈静化した。すると、2002年初頭にブッシュ政権の近辺で「次はイラク?」の噂がたった。真っ先にこの風を感じ取ったのが当時のイスラエルだ。同国のシャロン政権はすぐさまワシントンに高官を派遣した。そこで『なぜアメリカはイラクを標的にするのか。危険なのはイランではないのか』と詰めよった。この時、ブッシュ政権は『心配するな、イラクは低いところになっている果実のようなものだ。われわれはイラクの後でシリアとイランを攻略し、必ず中東全域をアメリカの支配下にすると答えた」(1月21日SOAS大学にて、公式サイト)
アメリカのイランへの圧力はずっと続いてきた
教授の話を裏付けるように、2002年の1月29日の一般教書演説で、G・W・ブッシュ大統領は、イラン・イラク・北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しで非難した。そして同5月、当時国務次官だったジョン・ボルトン氏が、この3カ国にキューバ・リビア・シリアを加えた。
そして信じられないほど「予定通り」に、アメリカはイラク戦争に突き進んだ。それから16年。この間アメリカのイランへの圧力はずっと続いた。だが民主党のオバマ政権は対イラン強硬派勢力とは一線を画し、ドナルド・トランプ大統領も、最初の組閣ではボルトン氏を政権に押し込もうとする勢力に対し、「俺はTV映りが悪いあの髭が嫌いだ」と、なんともトランプ大統領らしい言い回しでその圧力をかわしていた。
トランプ政権になって、中東ではシリアへのミサイル攻撃はあったが、大統領は娘婿のジャレッド・クシュナー氏を介して親イスラエル政策を掲げる一方、全体としてはタカ派的な政策はマイク・ペンス副大統領に任せてきた。そして自分自身は北朝鮮の金正恩氏と何度も会談するなど、焦点を絞らせないように立ちまわってきた。
だが、それが難しくなったのがこの5月前後からだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら