ジャカルタ地下鉄開業、薄い「日本」の存在感 記念式典で大統領は一言も「支援」に触れず
MRTJプロジェクトに対し、2008年から2度にわたって供与された円借款は1233億7000万円にのぼる。しかしながら、ジョコウィ大統領は開業セレモニーでのスピーチで、その点については一切触れなかった。
大統領はこのセレモニーで、MRTJ南北線第1期区間の開業および、第2期区間であるブンダランHI―コタ・カンプンバンダン間の着工を宣言したほか、国営企業グループが主体となって建設中のLRT Jabodetabek(高架式の軽量軌道線)の一部区間の今年中の完成、さらにMRTJ東西線事業の開始も約束した。事実上の政権公約である。しかし、再び日本にお願いするとの言葉はなかった。
実はこのセレモニーの前に、大統領はイストラ駅から石井正文駐インドネシア大使らとともにセレモニー会場最寄りのブンダランHI駅まで列車に乗車し、駅構内で関係者のみを招いた日本側による式典に出席している。
そこでは日本に対する謝辞の言葉があったとされるが、多数の市民・報道陣が詰めかけた開業セレモニーでは、石井大使によるあいさつすらなく、大統領による格好の政治的アピールの場になっていた。
「外国依存」の批判恐れた?
ジャカルタ都市圏にはさらに200km超の都市鉄道網が必要とも試算されており、ジャカルタ特別州政府は今後10年間の鉄道整備に300兆ルピア(およそ2兆3900億円)が必要と見積もっているが、この巨額費用をはたしてどこから拠出するのか。日本のODAでこれらすべての整備を担うのは当然不可能だ。
高度成長真っただ中のインドネシアだが、近年は国が借金を抱えることに対して非常に後ろ向きになっており、鉄道整備についても民間資本の活用を模索している。
MRTJ南北線の開業セレモニーで「日本」というワードが出なかったのも、ただでさえ外国依存と批判されてきたジョコウィ政権にとって、日本からの借り入れで建設したという情報が支持率に影響すると判断されたという面は少なからずあるだろう。
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