たとえば、急ピッチでIoT化が進む自動車業界では、完成車メーカーも部品メーカーも、ITエンジニアを大量に必要としているし、金融系企業も、フィンテックのサービスを開発するための人材を求めている。WEB系の開発エンジニアだけでなく、AIのプログラムエンジニアや、ビッグデータを解析できるエンジニアへの需要も高い。
理系私大の雄である東京理科大学では、求人票を持ってくる企業の種類が明らかに広がっているという。同大学理学部第一部応用数学科の瀬尾隆教授は、「例えば、建設会社ならもともと構造解析の求人で訪れていたが、最近は『工事の無人化を行いたいので、そのための人材が欲しい』と訪れる。新薬の臨床データの分析をするために製薬会社からの求人も出てきた」と、企業側の変化を実感していた。
長期インターン経験で中途並みスキル持つ新卒も
新卒のITエンジニアのなかには、すでに高度な能力を持ち、実績も積んでいる即戦力人材がいることも、企業が惜しみなく高額報酬を支払う理由の1つだ。
近年は、IT企業で数カ月~1年程度の長期インターンシップに参加し、その会社の最先端の開発プロジェクトに携わる学生が少なくない。
「そうした学生は、高校生の頃からコンピュータを扱っているので、大学卒業時点で6~7年のキャリアになっている人もいる。中途採用のエンジニア以上のスキルと経験を積んでいるうえに、若手ならではの柔軟な発想も持っている。そうした人材はどの企業も欲しい」(宮本氏)。
冒頭で紹介したDeNAやサイバーエージェントが高額な初任給を提示しているのは、こうしたタイプの即戦力人材だ。DeNAが最高年俸1000万円で募集しているのは、エンジニア職のうち、「AIスペシャリスト」のみ。サイバーエージェントは、技術的スキルや実績、AIなどの要素技術研究成果、執筆した論文、同社での就業経験を査定し、エキスパート認定を受けた人に限り、最低年俸720万円を支払う。
「ビッグデータを扱うデータサイエンティストやアプリの開発者など、企業によってニーズはまちまちだが、重要なのは、インターンなどで実務経験があること。有名企業ではなく、小さなベンチャー企業での経験だとしても、高く評価される」(宮本氏)。
スキルと実務経験に加えて、語学力があると、さらに初任給は跳ね上がる。外資系企業や海外企業からのオファーも殺到するからだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら