反体制の「5つ星運動」と極右の「同盟」によるイタリアの連立政権がルール破りの予算案を提出し、大問題になっている。イタリア政府は2019年の財政赤字をGDP(国内総生産)比で2.4%に拡大させるとした。これは「GDPの3%以内」という欧州連合(EU)のルールに違反するものではないが、同国財務相がEUに対して非公式に約束していた1.6%を大幅に上回る。
イタリア経済は構造問題を抱え、慢性的な低成長に苦しんでいる。こうした状況で財政赤字を拡大させるのは、どう見たって軽率だ。イタリアが抱える債務残高はGDP比ですでに130%を突破。ギリシャに次いでEUで2番目に高い水準となっている。
長期的な政策課題は目先の政治の犠牲になる
イタリア銀行(中央銀行)によれば、財政を持続可能なものとするには、基礎的財政収支(借入金を除く歳入と、元利返済を除く歳出の差)の黒字をGDP比で3.5〜4%に拡大させる必要がある。しかし基礎的財政収支の2019年黒字見通しは、従来の1.9%から1.3%に後退した。
長期的な政策課題は、必ずといっていいほど目先の政治の犠牲となる。ポピュリスト政権となれば、なおさらだ。イタリアの連立政権が国民との約束を守るには、とにかく税金をバラまくしかない。5つ星運動が低所得層に一定金額を配る「市民所得」を約束する一方、同盟は減税を公約。さらに両党は、年金受給開始年齢の引き上げを決めた2011年の年金改革を無効化しようとしている。
なるほど、同連立政権も少なくとも部分的には貧困問題に対処しようとしている。リーマン危機やそれに続く欧州債務危機で、イタリア人の生活水準は著しく低下。およそ500万人が、衣食住にも困る絶対的貧困の状態にある。1人当たり実質可処分所得も2009〜2012年に急落し、今では単一通貨ユーロ導入前の水準を下回る。
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