日本を守るために必要な移民政策の「鉄則」 外国人差別はNGだが「自国民優先」は当然だ
日本の労働市場との需給調整のための仕組みが不十分であれば、単純就労分野でなし崩し的に外国人労働者の受け入れが拡大し続け、深刻な問題が発生する。不況時における需給調整も十分に図れない可能性がある。
入管法上単純就労が認められている日系人(日本にルーツを持つ外国人)が、リーマンショック時に大量失業したため、政府は2009年度に日系人失職者に対して多額の公的給付を行うことによる帰国支援事業を実施せざるをえなかった。本人1人当たり30万円、扶養家族1人当たり20万円の帰国支援金を給付し、その結果、当該事業によって総額68億円を給付し、2万1675人もの日系人が日本を離れたことは記憶に新しい。
政府は、既存の就労資格に係る受け入れ基準の緩和も決定している。たとえば、外国人留学生が日本の大学を卒業し、年収300万円以上の日本語を使う仕事(日本語による円滑な意思疎通が必要な業務)に就けば、職種を問わず、就労資格を認めることなどを決定している。
今後、日本人が外国人と労働市場において広く競合し、労働需給バランスが崩れることがありえ、外国人に職を奪われているとの不満が発生し、社会統合政策の不備ともあいまって、日本社会において分断や混乱が生ずるおそれがある。また、企業が現業的分野において安易に外国人労働者に依存することによって、生産性向上や就労環境向上のための企業努力が妨げられ、産業構造改革も進まなくなる懸念がある。
なし崩し的な事態を防ぎ、秩序だった受け入れを行い、深刻な問題の発生を防ぐためには、まず、政府が「自国民雇用優先の原則」(厳密には、外国人永住者や定住者を含む国内労働市場を優先することを意味する)を政策ポリシーとして明示し、主権者たる日本国民の職が奪われないことを表明するべきである。
「自国民優先」の具体的な方法とは?
「自国民雇用優先の原則」を実現するために用いられるのが、労働市場テストである。労働市場テストとは、企業が外国人労働者を雇用したい場合、一定期間求人をしてみてなお自国民を採用できない場合に限り、外国人労働者の雇用を認める制度である。
この労働市場テストの実施に加えて、公正で客観的な指標に基づく受け入れ要件を設定する必要がある。具体的には、クオータ(総量規制、職種別規制、地域別規制による受け入れ人数枠の割り当て)の範囲内であること、職種別・地域別の有効求人倍率が一定値以上であること、外国人雇用上限率(受け入れ企業の従業員数規模などに応じた受け入れ人数枠)の制限範囲内であることなどを要件とするべきである。
上の表を見ても明らかなとおり、少なくとも単純労働者については、自国民雇用優先原則を明示し、労働市場テストの実施に加えて、客観的な指標に基づく受け入れ規制を行うのが世界の移民政策の「常識」である。「特定技能」に係る政府案はこの点が明らかでない。今秋の臨時国会に提出される改正法案の最重要ポイントである。
禁じられるべきはあくまでも外国人に対する不合理な差別である。日本が主権国家である以上、日本人と外国人との違いは違いとして認めたうえで、政策目的達成の観点(出入国の公正な管理や日本の労働市場との調整など)から合理的な措置を取るべきなのは当然である。いわゆる「地球市民」観を取らないかぎりは、国家として採用すべき移民政策が、人類愛的な優しさが一歩後退した、ある種冷徹なものとなることはやむをえない。その本質を押さえ、覚悟をもって議論する必要がある。
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