安倍首相を襲う「9.30沖縄決戦」という試練 辺野古移設問題で「オール沖縄」と対峙
厳しい残暑が続く中、永田町の話題は自民総裁選(9月7日告示・20日投開票)一色となっている。ただ、現職の安倍晋三首相と挑戦者の石破茂元幹事長の「一騎打ち」とはいうものの、党内情勢から「首相の3選」が確定的で、すでに党内では3選後の人事構想が飛び交っているのが実態だ。そうした中、首相にとって9月30日に投開票となる沖縄県知事選が「3選後の政権運営を左右する最初の試練」(自民幹部)となる。
翁長雄志(おなが・たけし)同県知事の急逝を受けて実施される同県知事選は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題を最大の争点に、与党と「オール沖縄」がそれぞれ擁立する候補が激突することになる。日米合意に基づいて辺野古移設を進める政府・自民党には、「知事選敗北は許されない」(自民幹部)ため、公明党の協力も得て総力戦で臨む。これに対し、保革を超えて辺野古移設に徹底抗戦する翁長県政を支えてきた「オール沖縄」勢力は、立憲民主党など主要野党を巻き込んでの「反政府野党共闘」で迎え撃つ構えだ。
政府は辺野古移設に向けて8月中旬に予定していた埋め立て海域への土砂投入を「天候」を理由にして知事選後まで延期する方針だが、「知事選への悪影響回避が狙い」(政府筋)なのは明白。与党支持候補は「辺野古移設の是非」への明言を避けるなど争点外しに懸命だが、翁長氏の弔い合戦ともなるだけに、「沖縄県民の反政府感情が高まれば、前回知事選に続く政府・自民党の敗北につながる」(自民沖縄県連)との不安は拭えない。このため、同時選挙となる宜野湾市長選も含めた9.30沖縄決戦は、首相にとって「3選」後の政権の前途を占う試金石となる。
「自公維VSオール沖縄」の決戦に
膵(すい)がんを公表し、知事として公務を続けながら治療していた翁長氏は、病状の悪化で8月8日に死去した。同氏は普天間飛行場の辺野古移設に強く反対して、4年前の知事選で自民支持の現職を破って当選したが、元自民党沖縄県連幹事長でもあり、政治的立場の違いを超えて移設反対派の支持を得てきた沖縄の実力者。共産・社民両党などが中心となる革新系勢力に地元の保守層も巻き込んだ「オール沖縄」が翁長県政を支えてきた。
これに対し、辺野古移設に突き進む政府・自民党は、翁長氏の1期目の任期が切れる今年11月に予定されていた県知事選での県政奪還を狙い、早々と宜野湾市長だった佐喜眞淳(さきま・あつし)氏(54)の擁立を決めて選挙準備を進めていた。一方、「オール沖縄」側は翁長氏の続投を前提にしてきたが、翁長氏の急逝を受けて後継候補に沖縄3区選出衆院議員の玉城(たまき)デニー自由党幹事長(58)に出馬を要請、玉城氏も29日に正式出馬表明した。
これに先立ち、沖縄県選挙管理委員会は8月13日に翁長氏死去に伴う県知事選を9月13日告示・同30日投開票とする日程を決定した。自民党が擁立した佐喜眞氏は、与党の公明党と野党の日本維新の会も支持する方針で、最近の沖縄県内の地方選と同様に「自公維」の枠組みでの選挙戦となる。一方、玉城氏の出馬を主導した小沢一郎自由党代表は、立憲民主、国民民主、共産、社民など野党各党に協力を要請しており、知事選は「自公維VSオール沖縄・野党共闘」による一騎打ちの構図となる。
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