ドイツから感じた、「日本型結婚式」の違和感 なぜキリスト教徒でないのに教会式なのか?

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ドイツでの結婚式は、おおまかに分けて、「役所式」と「宗教式」の2つの形がある。「役所式」は耳慣れないと思うが、Standesamtで行う挙式のこと。Standesamtは、日本でいうところの市役所や町役場で、戸籍局などと訳される。「結婚式を執り行う市役所の専門部署」というイメージだ。「宗教式」はその名のとおり、信仰している宗教の形式にのっとった結婚式を行う、宗教的行事だ。片方だけの挙式の場合もあるし、両方で式を挙げることもある。

Standesamtが作成した「Kirchliche Hochzeit und standesamtliche Eheschließung」というリポートによると、教会での挙式率は地域によって大きな隔たりがあり、メクレンブルク=フォアポンメルン州は約2割ほど。一方、ザールラント州の一部地域では7~8割ほどに上るようだ。

私が住んでいるヘッセン州は、「教会での挙式が社会的に重要であることは変わりないが、最近の新郎新婦は、多くがStandesamtでの”イベント型結婚式”を望むようになっている」と分析されている。チャペルでの挙式はあくまで宗教的意味合いがあるため、信仰が異なるカップルや、信仰心が薄いカップルの場合は、教会で挙式しないことが多いようだ。

経済的理由が原因で結婚をためらう若者たち

次に感じるのは、日本においては挙式の費用が高額であるという点。若者が結婚を躊躇する理由として経済的な負担が指摘されることが多い。統計でもその傾向が明らかになっている。2013年の『厚生労働白書―若者の意識を探る―』では、「1年以内に結婚することとなった場合、何か障害になることはあるか」という項目があり、男女ともに約7割が「障害がある」と答えている。その理由として、男女ともに4割以上の人が、「結婚資金(挙式や新生活の準備のための費用)」を挙げている。

若者が心配でたまらない「結婚資金」に当たる、結婚式の費用を見てみよう。

『ゼクシィ』結婚トレンド調査2016調べ」によれば、挙式、披露宴・披露パーティ総額の平均は359.7万円だ。ご祝儀で多少はまかなえるといっても、大きな出費になることは間違いない。結婚資金への不安感から、結婚に踏み切れない人がいるのも、この金額を見ればうなずける。だが、本当にそれほどの費用をかけるべきなのだろうか。ウエディングビジネスに踊らされているだけではないだろうか。

それに対し、ドイツでは結婚式に多額の費用をかける人はまれだ。保険会社、CosmosDirekt.によると、ドイツの挙式・披露宴の費用は、1000~5000ユーロ(約12万~約61万円)が26%、5000ユーロ~1万ユーロ(約61万~約122万円)が36%となっており、挙式・披露宴の総額は、67%が1万ユーロ(約122万円)以下で収まっている。なぜドイツの挙式はそんなに安上がりなのかというと、ドイツのウエディングビジネスが日本ほど熱心ではない、ということが挙げられる。

教会は宗教施設であり、Standesamtは役所なので、利益を追わないのが基本だ。費用が大きく変わるのが花嫁衣裳と飲食代だが、貸衣装屋やカタログを見て自分で衣装を決め、懐事情に合ったレストランを自分で予約すれば、300万円もかかることは、まずないだろう。ドイツには、日本のような結婚式に特化した「式場」はないため、自分の裁量で決められることが多く、費用も抑えられる。

また、日本の結婚式での最大の謎は、披露宴の配席ルールである。新郎新婦の両親は、愛情を込めて育て上げた子どもの晴れ姿を、いちばん遠くの末席から眺めることになる。新郎新婦からいちばん近いところにはだれが座るかというと、ゲストの中でいちばん格上の人だ。普段は折り合いが悪くとも、礼儀として上司に仲人を頼む人もいるかもしれない。

前出の「結婚総合意識調査2016」(リクルートブライダル総研調べ)によると、披露宴や披露パーティを行わなかった人の「結婚式観」は、「段取りや準備は面倒」「招待客として誰を呼ぶ・呼ばないの線引き(選択)することが面倒だ」が1位と2位になっており、「形式ばった結婚式へのネガティブな印象」により、披露宴や披露パーティを避けていることがわかる。

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