国会議員の選挙運動費用収支報告書と事務所への直接取材から、余剰金とその使途などの詳細データをまとめた
公職選挙の立候補者は自身の選挙に際して、受け取った寄付金やその使途などの収支を報告する義務がある(国会の場合、衆議院の比例単独候補は除く)。収支は大きく(1)候補者が選挙資金として集めた「収入」、(2)事務所の設営などに使った「支出」、(3)支出のうち特定の用途(たとえば看板やポスター代など)を税金で肩代わりする「公費負担」に分けられる。候補者の実質的な収支は「収入 -(支出 - 公費負担)」で算出することができる。
余ったお金(余剰金)は公開資料から把握できるが、それをどのように処理すべきかは公職選挙法に規定がない。たとえば安倍晋三首相、菅義偉官房長官、枝野幸男立憲民主党代表などは自身の政治団体に余剰金と同額を寄付している。この場合、政治団体の収支報告書を調べることによって、余剰金の行方がわかるが、多くの議員は政治団体へ寄付しておらず、公開資料から余剰金の使途を特定できない。
余剰金の使途がわからない議員は268名。それら議員の余剰金を合計すると、約9億5000万円にのぼる。
今回は、現職の衆議院・参議院議員の選挙運動費用収支報告書から余剰金の額とその使途を調査した。このページでは、各議員の詳細データや所属、地域などに応じた平均値などを確認することができる。
参議院議員は現職の最新選挙(大部分は2013年・2016年の参議院議員選挙)にかかる選挙運動費用収支報告書を対象とした。
衆議院議員の最新選挙は2017年だが、2018年に余剰金を政党支部や政治資金団体に寄付している場合、その公開は2019年11月となるため、現時点では余剰金の使途を確認することができない。そのため衆議院は現職議員を調査対象としつつ、収支報告書は2014年の選挙にかかるものを対象とした。2014年選挙に立候補していない議員(たとえば2017年が初出馬の議員など)は詳細データ表示の対象外とした。
政治団体への全額入金を確認
余剰金と同額を政治団体に入金(寄付)したことを政治団体の収支報告書などによって確認できた。
政治団体へのほぼ全額入金を確認
余剰金とほぼ同額(差額が5万円未満)を政治団体に入金(寄付)したことを政治団体の収支報告書などによって確認できた。
その他収入で相殺
余剰金全額が選挙運動の「その他収入」(候補者の自己資金あるいは候補者の借入金)によって100%相殺されたと判断できた。
197条で処理
公職選挙法197条(選挙運動に関する支出とみなされないものの範囲)に基づく処理が確認できた。
収支報告書を未確認
政治資金収支報告書を入手できなかったことなどから、余剰金の処理実態を把握できず。
確認できず
公開資料から行方を確認できない余剰金の額が余剰金の50%以上。
一部が未確認
公開資料から行方を確認できない余剰金の額が余剰金の50%未満。
余剰金ゼロ
選挙運動収支報告書において、「支出」から公費負担分を差し引いた金額(候補者の実質的な出費)と「収入」がプラスマイナスゼロ。
余剰金マイナス
選挙運動収支報告書において、「支出」から公費負担分を差し引いた金額(候補者の実質的な出費)が「収入」より多いもの。
余剰金5万円未満
選挙運動収支報告書において、「支出」から公費負担分を差し引いた金額(候補者の実質的な出費)と「収入」との差額が5万円未満。政治収支報告書には5万円未満の寄付について、寄付者の名称を報告書に記載する義務がないため、今回の取材では最終的に分析の対象外とした。
14年不出馬
調査対象とした2014年12月の衆院選で立候補しなかった。調査対象外。
14年比例単独
2014年12月の衆院比例ブロック単独候補であるため、報告書の提出義務なし。調査対象外。
Frontline Pressと日本大学・岩井奉信教授の共同取材チームは、調査と分析の際、500人以上の国会議員に対し、個別に質問状を送付。議員側からは事務所担当者や秘書から回答を得ています(無回答もあり)。それらの内容については、各議員の詳細データの紹介ページにおいて、「確認できず」「一部が未確認」に該当する268人の議員についてのみ回答を記しました(趣旨を変えない範囲で回答文の省略などを行っているケースもあります)。
調査:Frontline Press
協力:スローニュース株式会社
制作:荻原 和樹(東洋経済オンライン編集部)