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企業と社員の成長が融合する組織とは? 多様な人材が働きたくなる
「働き方改革」

少子高齢化や人口減少が進み、労働力不足が深刻化する中、企業経営において「働き方改革」は避けて通れない最重要課題である。また、国を挙げた働き方改革をめぐる動きも活発化しており、日本企業の働き方をめぐる環境は大きな転換期にあると言える。これからの企業のあるべき姿とは、働き方改革の先にあるものとは何か?資生堂で働き方改革やダイバーシティ経営、女性活躍の推進に携わり、現在はwiwiwの代表取締役社長を務める山極清子氏と、アクセンチュアの常務執行役員として、働き方改革の中心的役割を担っている中野将志氏が語り合った。

制作:東洋経済企画広告制作チーム sponsored by accenture

「働き方改革」は
「働きがい改革」

中野全国の企業で働き方改革が進んでいますが、働き方改革を進めるのに重要なこととは何だと思いますか。

山極働き方改革に取り組むには、エンゲージメントが非常に大事です。企業は、社員一人ひとりがやりがいや働きがいを持ち、自己実現をできる場を提供しなければなりません。働き方改革はそのためにあると言っても過言ではありません。また、働き方改革の一丁目一番地は長時間労働の削減と時間あたりの生産性の向上です。それなのに、「ノー残業デー」の導入とか、形からばかり入ってしまう企業が多いですね。しばしば社員は既得権益を守りたがるし、社長は自分の任期中にリスクを冒したがりませんが、改革を実現するためには、多様な人材が活躍できる「ダイバーシティマネジメント」と、男女ともに実現可能な「ワーク・ライフ・バランス」とを包括的かつ同時に取り組む「ダイバーシティ経営」が不可欠なのです。

中野私もそのとおりだと思います。働き方改革は、「働きがい改革」であり、ビジネスと働き方改革は直結しています。アクセンチュアではその意識で、3年前から独自の働き方改革「Project PRIDE」に取り組んできました。改革を始めた頃、お客様からの需要が膨らんだことなどから、さらに人材を採用する必要がありました。しかし、その頃のアクセンチュアの評判は、長時間労働、仕事のプレッシャーがきついなど、ややブラックなイメージだったんですね。すると、いい人は集まってきてくれない。これはとにかく早くワークスタイルを変えなければいけないということで始まりました。最初は、われわれ本部長以上も叩いて伸ばすみたいなストロングスタイルでやってきたので、「改革をすれば社員のスキルが落ちるんじゃないか」などさまざまな議論が出ました。しかし、そんなことを言っている場合ではないと、すぐに取り掛かりました。ようやく成果が出てきたと感じています。

山極企業の中には明文化されていない制度や雇用慣行がいっぱいあって、これは生活習慣病みたいなものですね。これらによって、その企業でしか通用しない古い社会的価値観や企業風土が温存されてきたのです。

中野そうなんです。3年前も時短勤務や育児休暇など、すでに制度としてはいろいろありました。ただ、現場の感覚としてなかなか利用しづらかったんですね。戻ってきたときになんとなく居づらいといった雰囲気ですとか。どちらかというと、制度より風土が大事なんですね。これは、まず管理職がマインドセットを変えていかないと変わらないと考え、最も神経を使いました。当初は、「こんなのアクセンチュアじゃなくなる」とか「お客様の期待は変わらないのに労働時間を減らして恥ずかしくないのか」とかさまざまな声が出ました。それでもしつこいほどに制度の呼びかけや事例の紹介などの社内コミュニケーションに取り組んだことで、管理職をはじめ社員全体の意識がこの3年間でガラリと変わりました。みんながフラットに仕事をできる環境が少しずつできてきた気がします。それは、エンゲージメントのスコアが良くなっていることにも表れていますし、労働時間も確実に減っています。

山極 清子株式会社wiwiw 代表取締役社長

美容部員として資生堂に入社し、アメリカ駐在を経て資生堂本社に異動。1995〜97年まで21世紀職業財団両立支援部事業課長として出向し、資生堂復帰後は資生堂初の女性人事課長に就き、男女共同参画、仕事と育児・介護との両立支援、働き方改革の推進の中心として取り組んできた。2009〜14年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、14年から昭和女子大学客員教授。経営管理学博士(立教大学)。2010年よりwiwiw社長執行役員、18年より現職。著書に『女性活躍の推進 資生堂が実践するダイバーシティ経営と働き方改革』(経団連出版)。

女性の活躍に必要な、
ワンオペ育児からの脱却

山極そもそもグローバル企業であるアクセンチュアでさえも、制度の理解に欠けたところがあったのですね。そこから働きがいを引き出すポイントになる管理職のマインドを変える改革に着手されたところがすばらしいですね。私が働いていた資生堂は、今でこそダイバーシティ先進企業ですが、1987年以前は、終身雇用や正社員・男性中心の就労モデルそのものの会社でした。

中野今は女性が輝いているイメージが強いですが。

山極化粧品メーカーということもあり、美容部員として、女性が社員として活躍できる土壌は1960年代からありましたが、女性社員が80%以上を占めるのに90年代初めまでは女性管理職は3%しかいなかったんです。女性が多くても意思決定は男性ばかりだったんですね。87年に社長に就いた福原義春氏は、働き方やダイバーシティには当初から理解がありましたが、抵抗する男性の役員や管理職がいたため、女性の管理職登用は10年間停滞してしまったんです。こうした中、私は97年に女性初の人事課長に登用され、男女の協力者を得てポジティブ・アクションを推進することになったのです。

中野われわれはこの3年間で、女性も活躍してもらわないときちんとしたサービスを提供できないということを再認識しました。男性でも女性でも、それぞれ大変なときはお互い助け合おうという風土が根付いてきました。実は、今は女性の方が男性より退職率が低いんです。

山極そうした職場での男女協働を引き出すにはワンオペ育児という日本の土壌も変えていかないといけませんよね。私は結婚するときに「一緒に育児や家事をしてくれる人、手を挙げて!」と言って相手を探しましたから(笑)、夫は当時としては珍しいイクメンでしたし、家事も育児も私より上手なくらいです。

中野アクセンチュアも新入社員の男女比がほぼ50:50になってきました。これからは管理職や役員にも女性を増やしたいと思っていますが、女性にとって何が本当に必要なのかについてはつねに私たちも悩んでいます。

山極ズバリ教えましょう(笑)。まず、男性が「育児や家事を『手伝う』」はNGです。「手伝い」や「協力」ではなく、男性もレギュラーにならないといけないのです。家庭内での男女平等ですね。ワンオペ育児を変えるには長時間労働の是正が不可欠です。育休中であっても日々学習する時間の確保も必須になっています。たとえば、育児休業中に子育てと家事しかやらないとします。そうすると、復帰後、キャリアと育児を両立できずにマミートラックに陥ってしまうケースが出てきます。育休中こそ、パートナーを巻き込んでキャリア戦略を立て、家事や育児のシェアの訓練をするなど、男女ともにキャリアと育児を両立できる環境を整えること、これが重要なのです。また、夫婦の協働に加えて「子育てはチームで」がキーワード。私たち夫婦は、同じマンションに住む5家族で協力し、キャリアと育児の両立を実践してきました。子育てをする中で生まれる、こうした助け合いを体験すると、職場でも「大変なときはお互い助け合おう」となるものです。

中野育ってきた環境などで、男性の考えていることと女性が本当に望んでいることがずれていることがよくあります。女性同士でもあると思います。このずれた認識を合わせることも重要ですよね。アクセンチュアでは、国際女性デーにあわせて全女性社員が参加するイベントを毎年行っています。デジタルでも参加できます。女性がどう活躍するか、それにはどんなことが必要かを女性自身で話し合う場になっているのです。また、活躍したいという女性たちに、「スポンサー」という直属の上司とは違うサポート役をつけるようにしました。それぞれのライフスタイルをきちんと理解して、正しい方向に進むことを促すメンターのようなものです。さらに、女性の昇進率や管理職比率をきちんと見える化して、チャンスがあることを明確にしています。女性が女性を評価できる場も大事にし、管理職の女性も増やしています。

山極それは非常に大事なことですね。実は男女間の認識がずれる原因には、「予言の自己成就」が関係していることが多いのです。それはこういうことです。男性上司が「子育て中の女性に難易度の高い業務は無理」と考え、責任ある仕事を男性に任せたとします。するとそれにチャレンジし職責を果たした男性は伸びますが、女性は成長の機会を逸します。こんなことが繰り返されると、チャンスをもらえない女性は仕事への意欲を失い、キャリア形成をあきらめてしまいます。それを見た男性上司は「ほら、思ったとおり女性はダメだ」と、自分の思い込みに一層確信を深め、ますます女性に機会を与えなくなります。男性上司の行動から生じた結果なのに、あたかも自然に起きたと錯覚してしまうのです。アクセンチュアの取り組みは、このことと真逆です。周囲も女性自身も、「自分は活躍できる」という期待が持てるもの、「成長の自己成就」と言ってもいいですね。

「For Client」から
「With Client」へ

中野われわれの働き方改革は今年からフェーズ2に入り、タレントを生かせる環境づくりに取り組んでいます。今、お客様から求められるのは、イノベーション。しかし、一人で考え込んでもなかなかいいアイデアは浮かばないものです。バックグラウンドの異なる、さまざまなタレントが必要なのです。そのため、アクセンチュアはいわゆる「スーパージェネラリスト」を求めるのをやめました。タレントのシナジーは、スキルが違い、離れているほどいいですよね。多様な人材がコラボレーションするために「_ACCENTURE FORM_」という新しい方法にも取り組んでいます。私が若い頃は、プロジェクトルームに集まると、最初は活発に意見交換をしていてもパートナー(上司)が入ってくると沈黙し、だんだん息苦しくなり、何か言うと怒られるんじゃないかと胃が痛くなったものでした(笑)。今は、クライアントも含めてプロジェクトメンバー全員でフラットに考えて、アイデアを出し合って、そして形にしてみようというアプローチに変わってきました。これが「_ACCENTURE FORM_」の考え方です。先日、ある金融機関で報告会をしたときは、スーツ姿の私の隣にはジーンズにスニーカー姿でデジタルデザインの話をする人がいて、反対側ではテクニカル系の人がセキュリティやテクノロジーの話をしている。そのくらい多様なのです。銀行の経営会議室にスニーカーで入った人は初めてでしょうね(笑)。

山極今のお話は、フラットな感覚で、多様なタレントの個性や発想、価値観を尊重し合い、「違い」を活力に変えようとするものです。このことにより、プロジェクト全体の活性化を図って提案力の強化を目指す戦略になっていますから、これこそがダイバーシティマネジメントですよね。

中野今までは 「For Client」といって、お客様のために何かをするというスタンスだったのが、お客様と一緒に作っていく、「With Client」に変わってきました。お客様も日常を離れて、さまざまな人が一堂に会し、みんなでアイデアを出して、そこからすぐにサンプルを作ってみましょう、とアクションを起こしながら進めていける場所として麻布十番に「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」を作りました。今年1月にオープンして、すでに300社以上が訪れています。見学やワークショップだけではなく、経営会議や経営合宿など、多様な使い方をされる企業さんもいます。

山極お客様を巻き込んでアイデアを出し合う「場」づくり、一緒に作り上げていくスタイルはすばらしいですね。この話を伺って97年に資生堂が掲げた行動宣言「THE SHISEIDO WAY」が思い浮かびました。この規範は最初が「お客様とともに」でした。その後「Value Co-Creation 2000」を打ち出しました。「ともに」は、アクセンチュアが掲げた「With Client」が重なります。こうした価値観を共有してやっていけば、お客様もプロジェクトの一員なのだという認識を持てますし、そのほうがお客様との関係も長く続きますよね。お互いウィン・ウィンの関係で、ビジネスとしてもいい形です。

中野 将志アクセンチュア 常務執行役員

金融機関のシステム開発、テクノロジーコンサルティングを経験し、2000年に戦略グループに異動。20年にわたって金融業界の事業戦略や海外展開の支援、異業種の金融事業への参入、M&A戦略などに携わる。銀行・証券・保険業界を担当するリードとして、多数の大手金融機関において数々の改革をもたらしてきた。05年よりマネジング・ディレクター、13年より金融サービス本部 統括本部長(執行役員)。17年より現職。

これからの時代に
必要な人材とは?

中野自分一人では仕事はできないと管理職も知ることが必要ですよね。仕事を「させる」のではなく、人材をどう「生かす」のかということをどこまで考えていけるか。多様なタレントの持つ強みをどう仕事に生かすかを考えることが重要です。また、このコミュニケーションのハブになるのが管理者なので、その場を設け、みんなの意見を聞いて理解し、整理する。部下がやったことにダメ出しするというよりは、みんなが考えていることを早く理解し、いかに準備していくかという先手の動きができるかどうかだと思っています。

山極いろいろな人がいて、いろいろな意見を言って、よいぶつかり合いがあることでイノベーションが生まれます。言わなければ何も起こらないですよね。上司のご機嫌ばかりをうかがう“ヒラメ”ではダメ。そういった意味では、そこをまとめる資質の高い人が求められます。

中野本当にそのとおりですね。これからどんどんみんなが自由に意見を言える環境を作っていきたいと思っています。モチベーションには指標がないので難しいところではありますが、いかに楽しいと思えるかが大事。そのためにはファシリテーターのような人、全体をリードするような人が必要です。社員が成長したいと考えていて、マネージャーはその環境を与える。これからはタレントの成長と会社の成長が融合している、そんな組織を育てていきたいと考えています。


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