勝ち残る営業組織のカギは、そのリーダーにある

市場が成熟・縮小傾向にある中で、どの企業にも、強い営業組織が求められている。「成果を上げて厳しい競争に勝ち残るための、カギになるのが営業マネージャーなどのリーダーの役割」と語るのは、ソフトブレーン執行役員の長田順三氏。「数多くの企業を見てきましたが、リーダーの意識が営業組織の能力を決めるとも言えるでしょう」と続ける。あなたは本当の意味で、会社が求めるリーダーの役割を果たしているだろうか。ぜひチェックしてほしい。

制作・東洋経済企画広告制作チーム

「無意識・有能」のままでは、組織のマネジメントができない

長田氏近影
長田 順三
執行役員
営業企画支援部長兼業務推進室長

2,000社以上の企業の営業組織改革に携わってきた長田氏は、「日本の企業では、優秀な成績を収めた方が営業マネージャーなどのリーダーになる例が多いのですが、その課題や弊害は無視できません」と説明する。

「プロスポーツの世界において、優秀なプレーヤーが必ずしも優秀な指導者になるとは限らないと言われているように、営業の世界でも優秀なプレーヤーが優れたリーダーになるとは言えないのです。なぜなら、優秀な営業成績を達成する方の多くは、意識をしなくても売れるための行動がとれているからです」と長田氏。

顧客への初回訪問から受注までの間には、さまざまなステップを経なくてはならないのだが、優秀な彼や彼女たちはいとも簡単に駆け上っていくのである。「たとえば、先方が想定している予算規模から計画の時期、そもそもの本気度や意思決定のキーパーソンに至るまでを自然に聞き出すことができるのです。そうした、より具体的な情報を基にシナリオを組み立てることによって案件を見極める精度も向上するのです」。長田氏はこれを「無意識・有能」と表現する。

「無意識・有能」のままリーダーになるのでは、マネジメントが不得意となってしまうのもある種の必然なのかもしれない。と言うのも、本人は無意識ゆえに、チームメンバーに対して「なぜそんな簡単なことがわからないのか」と感じてしまうからだ。そもそも、部下が何がわからないのかもわからないのである。このため、「とにかく訪問件数を増やせ」といった指示をしてしまいがちだが、効果はない。このような指示では、部下はエクスキューズのために、行くべき顧客ではなく、行きやすい顧客へ足を運ぶことになるからだ。

もちろんここで、「オレがやったほうが早い」と自分が外へ出て行くようでは、リーダーとしての意味はない。

「大切なのは、自分の勝ちパターンをチームメンバー全員に伝承することです。会社が求めているのは、プレーヤーとしてもマネージャーとしても優れた『有意識・有能』なリーダーなのですから」(長田氏)。

あなたのチームの営業会議には「次のアクション」があるか?

かつては受注件数のトップなどを競い合ったリーダーたちが集まり「今の若い者は……」と愚痴をこぼす光景がよく見られる。

それに対して長田氏は、「最近の若い人たちは、自発的に行動こそしないが、指示されたことはしっかりやる傾向があります。彼や彼女たちは、自分を成長させ、導いてくれる上司を求めているのです」と説明する。

つまり、リーダーにとって大切なのは、精神論などを持ち出して無理にモチベーションを上げることではなく、結果を出すことにつながる、「次のアクション」を明確かつ具体的に指示することなのである。

図:営業会議にかけている時間、営業会議のコストしかし、長田氏は、「多くの企業で、無駄な会議があまりにも多いのではないでしょうか」と指摘する。チームのメンバーは、成果につながる具体的なアドバイスを欲しているにもかかわらず、実際の会議はたくさんの報告書や会議資料を作成したわりには、受注の結果を報告するだけの場になっており、次のアクションにつながらないという。

ソフトブレーンの調査によれば、1週間あたり会議に2時間以上をかけている企業が58%もあるという。「営業組織が10人でチームを構成していたとすると、そのコストは年間約300万円にもなります。1受注平均粗利300万円の企業が、同じ時間を使って顧客を訪問すれば、年間約4285万円の粗利が見込めると試算しています」と長田氏。その差は大きい。リーダーとしてやるべきことは、無駄を省き、結果につながる会議に変えることではないだろうか。

スマートフォンやタブレット端末を活用し、営業活動を「見える化」

むろん、リーダーの中には、「次のアクション」を意識し、日頃からチームメンバーに対して細やかな対応を実践している人もいるだろう。自らが外出中でも、メールや携帯電話で緊密に連絡を取っているリーダーの姿も見かける。

「ただし、そうしたアナログな対応ができるのは、優秀なリーダーでさえメンバーの数が4、5人程度まで」と長田氏は話す。

チームがカバーする顧客の企業情報のほか、これまでの活動状況、商談の進捗状況などをすべて記憶しておくのは不可能。その都度、チームメンバーにヒアリングし、指示するようなことを繰り返しているのでは、いくら時間があっても足りないし、同じことを何度も説明しなくてはならないメンバーたちのモチベーションも下がっていくだろう。

「部下に同行するときの電車の中で、訪問先の顧客情報を確認する、というリーダーもいるようだ。このような準備不足では、いくらクロージング力のあるリーダーといえども、成約につながるはずがないでしょう」と長田氏は指摘する。

では、限られた時間の中で、これらの課題をどのように解決すべきなのか。

近年注目されているのが、スマートフォンやタブレット端末など、モバイルツールを活用した情報の一元管理。営業活動を「見える化」することで、リーダーは本来の業務に集中できるようになり、チーム全体の機動力も向上するという。