日本マイクロソフト

2021.12.17

耳を澄ませて、一人ひとりの価値観を理解する 「誰一人取り残さない」最強組織のつくり方

コロナ禍は私たちの働き方を大きく変えた。リモートワークが一気に普及したことで、これからは一人ひとりが状況に合わせて働く場所を自由に選べる「ハイブリッドワーク」の時代が到来すると予想される。会社で顔を合わせて上司が部下の働いている様子を直接目で見ることができることが前提の労務管理のあり方はもちろん、組織そのものが変容していく可能性が高いだろう。加えて、日本は労働力人口の減少が避けられない中で、企業が今後も継続して成長を続けながら生き残るにはどのような組織づくりが必要なのか。人材マネジメント研究の第一人者である学習院大学教授の守島基博氏と、日本マイクロソフトでモダンワーク ビジネスを担当する岡寛美氏が語り合った。
制作:東洋経済ブランドスタジオ

暗黙知に頼らず、強い組織をつくるには

朝、決まった時間にオフィスで集まり、上司は部下が働く様子を眺める――コロナ禍以前はスタンダードだったこの企業風景は、もう戻らないだろうと学習院大学教授の守島基博氏は話す。

「リモートワークの普及で、1人で目標もペースも設定して仕事をする『自律型人材』が求められるようになってきました。それに伴って、つねに上司が近くにいて指示を出すような従来型の働き方では、自律性が育ちにくいことが徐々に理解されてきています」

以前の働き方に戻らないならば、組織の変容に合わせて人事管理のあり方を変える必要がある。

守島 基博 氏

守島 基博(もりしま・もとひろ)

学習院大学 経済学部経営学科教授・
一橋大学名誉教授

米イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダサイモン・フレーザー大学経営学部Assistant Professor。慶應義塾大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授、一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年より現職。厚生労働省労働政策審議会委員などを兼任。20年より一橋大学名誉教授。著書に『人材マネジメント入門』『人材の複雑方程式』『全員戦力化 戦略人材不足と組織力開発』(すべて日本経済新聞出版)、『人事と法の対話』(有斐閣)などがある

「昨今は『従業員エクスペリエンス(従業員経験)』が経営の重要なキーワードとなってきています。一人ひとりが組織の中でどんな経験をしているのか、単に残業削減などの働きやすさだけでなく、自分の仕事に対するやりがいや自律性を高められるようなマネジメントをしていかなくてはなりません」(守島氏)

しかし、日本ではこれまで従業員エクスペリエンスが軽視されてきたと守島氏は指摘する。

「何の説明もせずに仕事を与えるなど、企業の人との向き合い方が弱体化しています。仕事に取り組む意義を理解すればモチベーションが高まるのに、従業員によい経験をさせようという配慮がないから、全体的な組織力も落ちてしまう。育成でも『背中を見て学べ』と突き放すのではなく、一人ひとりの顔を見て、仕事に取り組む意義をしっかりと説明することが大切です」

「仕事に取り組む意義が理解できないと働きがいも失われてしまいますよね」と岡氏

なぜそういった事態に陥るのか。守島氏は、企業が暗黙知に依存してきたことが問題だという。長年連れ添った夫婦間のように、「あれ」と指し示せば通じるような組織。夫婦ならばそれでもいいが、健全な緊張感を持ちつつ良好な関係を築くことが重要なビジネスの場では、物事の背景や理由まで丁寧に言語化して伝える必要がある。

「性や国籍、雇用形態といった表層のダイバーシティーは目に見えてわかりやすいのに対して、やりがいの源泉やワーク・ライフ・バランスについての価値観は見えにくくわかりにくい傾向にあります。これからの人事管理は、こうした『深層のダイバーシティー』を理解する姿勢を見せ、従業員一人ひとりに個の価値観を表明してもらうことも重要となってくるでしょう」

この20年間、「中間層」の育成が遅れている

従業員エクスペリエンスと直結する「深層のダイバーシティー」を顕在化させるには、どうすればいいのか。守島氏は、日本企業の成果主義の取り入れ方を見直す必要があるという。

「成果主義は、人材に情報や能力を与えてエンパワーメントする『前工程』と、その成果を測定する『後工程』の両輪で成り立ちます。日本では2000年代初頭くらいから徐々に成果主義が導入されましたが、『後工程』である成果の測定ばかりにフォーカスしてしまったため、必要以上の効率化や不要な競争が発生してしまいました。本来重要なのは、きちんと情報を与え、能力を開発する『前工程』なのです」

成果を測定する「後工程」だけに力を注ぐ中で起こったのは、優秀な人材への投資の偏りだ。経営幹部育成目的の選抜型研修やビジネススクールへの派遣が行われる一方で、“選抜されない人材”は置き去りにされた。

「ここ20年間は、エリート層に対する選抜型の研修が増えた一方で、従業員全員が一律に受けられる階層別の研修が減ってしまいました。それぞれの階層に合った適切なラーニングができていないために、中間層の人材育成が手薄になっています。日本人の能力のベースレベルは高いですから、非常にもったいない状態です。働く側もスキルアップに対するモチベーションが上がっておらず、働く人が自己啓発に費やす時間は1日6分という数字もあります
総務省統計局「平成28年社会生活基本調査」
(http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.html)

こうした状況に警鐘を鳴らす守島氏は、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる今こそ変革のチャンスだと強調する。

「DXではITシステムを変えるだけでなく、現場で活躍する人たちの仕事の仕方を変えることが大切です。ITを活用してコラボレーションを促すことで、中間層の自律性とスキルを高めていくのです」

日本マイクロソフト株式会社 モダンワーク&セキュリティ ビジネス本部 モダンワーク ビジネス部 部長 岡 寛美 氏

岡 寛美

日本マイクロソフト株式会社
モダンワーク&セキュリティ ビジネス本部
モダンワーク ビジネス部 部長

そうした組織の変革を後押しするため開発されたのが、21年2月に発表された従業員エクスペリエンス プラットフォーム「Microsoft Viva(ビバ)」だ。Vivaは、「Microsoft 365」を基盤としているため、組織のコラボレーションツールとして全世界で月間アクティブユーザー数1億4500万人(21年4月末時点)を突破している「Microsoft Teams」を起点に、毎日の業務の中で自然に活用できる。日本マイクロソフトの岡寛美氏は、その内容について次のように説明する。

「従業員一人ひとりが組織の中での体験、つまり従業員エクスペリエンスを高めていけるツールです。『Viva コネクション』『Viva インサイト』『Viva トピック』 『Viva ラーニング』の4つのモジュールを初期セットとして提供を開始しており、22年後半には5つ目のモジュールとして目標と主要な成果(OKR)の領域のソリューションである Ally.io が加わる予定です。さまざまな環境で、自律的な働き方が求められる中で、一人ひとりがつねに最大の能力を発揮できるよう支援します」

Microsoft Vivaが「従業員エクスペリエンス」を豊かにする Microsoft Vivaが「従業員エクスペリエンス」を豊かにする

Microsoft Viva の4つのモジュールでとりわけ注目したいのがViva インサイトとViva ラーニングだ。Viva インサイトは生産性とウェルビーイングを支援するモジュールで、自分の働き方や感情の変化についての振り返りや、チームメンバーとの円滑なコミュニケーションを支援し、心身ともに健康な状態で最高のパフォーマンスを出して働くために役立つ機能が備わっている。Viva ラーニングは、既定で Microsoft Learn、Microsoft 365 トレーニング ライブラリと 125(全言語合計)の LinkedIn ラーニングのコースにアクセス可能なほか、組織内で独自に作成した学習コンテンツや組織内で契約しており利用可能な外部のコンテンツプロバイダーのコンテンツに Viva ラーニングからアクセスできるようにすることも可能。まさに、複数の学習リソースを1カ所にまとめ、Teamsからアクセスできるようにすることで、従業員が毎日の業務の中で学習しやすくなる。興味のある分野を指定すると、関連コンテンツが表示されたり、検索で従業員がアクセスできる学習コンテンツを簡単に見つけることもできる。チャットやTeamsのチャネルにタブを追加することで、Teams内での学習コンテンツの共有もスムーズにでき組織的に効率的に学習を進めることができるというわけだ。

Viva インサイトで私自身が気に入っているのは、AIを活用したリマインドの機能です。Microsoft 365と連携しているので、私自身の状況に合わせて表示してくれます。『このメールの返信を忘れていませんか』『このドキュメントを読みましたか?』といった通知で確認やアクションの漏れを防ぐのに役立っています。『休憩を取る - 呼吸に集中して1分間過ごします』というストレス軽減のための機能もあり、仕事の合間で簡単にリフレッシュできます。また、『賞賛を同僚に送信する』 機能は、日頃の感謝の気持ちを簡単に伝えることができるものです。忙しい毎日でもお互いを思いやる気持ちを忘れずにいることは、成長し続ける強い組織づくりに欠かせない要素だと思います」(岡氏)

Microsoft Vivaを活用することで、人間にしかできないことにもっと時間を振り向け、イノベーションにつなげてほしいと語る岡氏。それに対して守島氏は、業務が効率化されることでコミュニケーションの質が高まれば、リーダーシップの概念も変わっていくと話す。

「今までは、上に立って統率するのがリーダーシップでした。しかし、Microsoft Vivaで従業員一人ひとりの価値観や関心分野が可視化されるようになれば、『どうすればチームメンバーをエンパワーメントできるか』『どう発言を引き出せばいいか』といった方向へリーダーシップの役割も変わっていくのではないでしょうか」(守島氏)

リーダーシップが「耳を澄ます」ような役割へと変化することで、心理的安全性が高まり、必然的にエンゲージメントも向上する。従業員一人ひとりが働く意義を持って生き生きと働き、自発的に学び続ける組織づくりにおいて、今後も時代の変化とともに必要な機能を追加し進化し続けるマイクロソフトの従業員エクスペリエンス プラットフォームである Microsoft Vivaに期待したい。

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