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CIOが社長になる日

企業を取り巻く経営環境の変化のスピードが激しくなっている。このような状況下で迅速な意志決定をするためにはITの活用が不可欠だ。IT部門、さらにはそれをリードするCIO(最高情報責任者)への期待も高まる。今後は、IT活用のあり方がビジネスの成否を決めると言っても言いすぎではないだろう。その点ではCIO出身のCEOがもっと誕生してもいいはずだ。しかし多くのCIOの現実は、複雑化したシステムの運用や高まるリスクに、限られたリソースで対応するだけで手一杯という企業も少なくない。CIOの悩みを解決し、イノベーションや競争力向上に貢献できる仕組みをつくるためには何が必要なのか、あなたがCIOになったつもりで考えてみてほしい。

制作・東洋経済企画広告制作チーム

辞令1

基幹システムを再構築せよ

あなたがCIOとして勤務するA社が、基幹システムを再構築することを決定した。

就任したばかりの新CEO直轄のプロジェクトではあるが、実質的な責任者はあなただ。これまで、20年前にスクラッチで組んだシステムを何度も改修し維持してきたが、すでに限界だ。当時のスタッフもほとんど退職している。時間やコスト、人的リソースは限られているが、失敗は許されない。成功に導いて欲しい。

  • 経営刷新にともなう再構築であり、品質、納期に対する要求は厳しい
  • 経営と業務部門を巻き込み、共同でプロジェクトを推進すること
  • Web、クラウドなども視野に入れたITアーキテクチャ、開発手法であること
辞令2

買収したネット企業と本業との
シナジーを加速させよ

あなたがCIOとして勤務するA社が、海外のネット企業を買収することになった。

シナジー効果を発揮するためには、ITの統合が不可欠だ。といっても、自社のシステムに合わせることで、買収先企業の特色を損なうことになってはいけない。だが、現地任せでは、ガバナンスも効かない。経営からは早期の統合とサービスのローンチを要求されている。さあ、どうする?

  • 自社のグローバル展開に求められるITアーキテクチャ、ガバナンスの確立
  • ネットを活用したビジネスのトレンドや技術などに精通した人材の育成
  • M&Aなど、事業の変化にスピーディーに対応できる開発体制・手法

ますます大きくなるCIOのジレンマ

 いまCIOは疑義を抱いている。先の辞令の遂行には、それぞれ真逆とも言える手法が必要だ。果たして自ら経験、実践してきたことは、今の常識に存在しうるものなのか。

 経営環境の変化のスピードが増し、事業の変化、システムの変化、そして人材までもがそれに追いつけないでいる。事業サイクルが長い時代はまだ良かった。大局を見据え、計画からローンチまでに時間をかけることができた。しかし今は、とにかく作って始めて、KPIをリアルタイムに把握し、顧客の反応をみて修正して、という短いサイクルが必要とされている。常識を振り返るのではない。発想の転換だ。

 CIOは「変化」を求められていると言える。実際に、日本企業のCMOの8割以上が「IT部門を戦略的パートナーとみなしていない」という調査結果もある※。ITがイノベーションや競争力強化につながると考えられていないのだ。だからこそ、IT部門をリードするCIOの積極的な取り組みが求められている。

※アクセンチュア「2014 CMO-CIO Alignment Survey(CMO-CIO調査2014)」

では、どうする? CIOを新定義し、この切り札で事を成す!

高回転が生み出す最適解 アジャイル型開発

注目されているアジャイル型のプログラム開発は、イテレートと呼ばれる小規模のサイクルを回しながら開発を行うことで、変化に素早く対応できるのが大きな特長だ。たとえば、業務用アプリの開発などでは、自社(顧客側)で画面や機能をテストできるので、要望や改善策が伝えやすくなる。事業の変化とスピードに対応していくため、どこまでアジャイルで開発をする領域を広げていけるかが問われている。いま熱い開発手法である。

堅牢統制を必要とされる事例は多い ウォーターフォール型開発

アジャイル型開発と比較されるのがウォーターフォール型開発だ。要件定義からテストまで、全ての工程を順々に実施し、一度に全機能をリリースするため、責任範囲が明確で進捗が管理しやすい。開発スタッフは、各フェーズの役割分担に応じて異なる要員が担当する。要求仕様が確実に満たされることが期待できるが、事業のトレンドが日々変化するなかでは、サービスの変化に応じて使用変更が出る場合、コストや開発期間が大幅に増加することもある。

領域に応じた最適な開発手法への進化 ハイブリッド「思考」のススメ

アジャイルとウォーターフォールを比較し「ウォーターフォール型開発は過去のもの」と考えるとすれば早計だ。なぜなら、ウォーターフォール型の統制力と望まれるスケール感はITの基幹となるにふさわしいからだ。高速開発させるアジャイル型に適するプロジェクトは多いが、両者の特性を理解し、課題に合う決定を下すのもCIOの役割だ。

ベストな布陣を組むのもCIO 極限までのオフショアという意味

例えば、アジャイル型のプロジェクトを成功させるには、自社(顧客企業)のIT部門と、外部スタッフのチーム力が鍵だ。IT部門全体の人材の質の向上は、コア人材のコア領域への選択と集中、そして極限までのオフショアがベストな方法だ。自社の戦略や事業と技術の両方を理解したコア人材と、高度なスキルを持つ人材とのマッチングは、同時にコストを下げる効果も持つ。

CIOをサポートする重要ポジション PMOとは何者だ?

CIOの悩みの一つは、年々プロジェクトが複雑化していることだろう。だからこそ事業とメンバーを横断管理する者、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィサー)が見直されている。プロジェクトを統制するとともに、管理、実行までを一貫して行える立場は、CIOを補う重要な役目を果たす。高度なスキルを有するPMO人材を何人保有できるかがCIOのミッションの成否のカギ。内部育成ももちろんだが、外部の優秀な人材の囲い込みも視野に入れたい。

事業とITの整合性=ガバナンス まず、同じ言語で話す!

IT投資を成功に導くためには、個々のプロジェクトのみならず、一貫したITガバナンスを確立させることが大切である。ITガバナンスの確立において重要なのは、経営や事業とITとの整合性を確保することであり、その点ではCIOの役割は大きいが、むろん、CEOやCMO、他のCXOとのコミュニケーションや、事業部門との連携も不可欠である。確立されたITマネジメントのもとで最適なIT投資を実行するためにも、PMOの存在が重要になるだろう。

リアルタイム経営指標へ 古い財務諸表はもういらない

CIOが社長になれない理由は、経営・財務との関連性だ。事業のトレンドが日々変わってくるなかで、旧来の財務諸表だけではビジネス判断はできない。重要となるのは、未来のビジネスを予測することであり、そのためにキーとなるKPIをリアルタイムに把握することだ。精鋭の事業部は日々PDCAをまわす。KPIを精査するのに旧来の財務諸表がひらひらと降ってきたら時間は止まるだろう。トレンドを察知し開発がリアルタムに事業を後押しする。この旗振り役は、CIOにしかできない仕事だ。

時代の必然条件を満たすCIOが、社長になりうる

 デジタル時代におけるビジネス環境は激変の中にある。企業のIT部門、さらにはそのリーダーであるCIOはどのような役割が求められているのか。

 かつてのIT部門の役割は、業務の効率化が主であった。品質を向上させ、コストを削減することが大きな目的だったのである。「安定稼働」、「新規開発よりも運用」が重視されがちだった。

 企業が今後、グローバルな市場で競争力を強化するためには、アジャイル型開発やクラウドなどを活用した、イノベーティブなビジネス・サービスの創出が不可欠である。ニーズは多様化し、業務も複雑になる時代に、そのビジネスに最適化されたITというものが必要になってくるのである。

 これをCIO一人で実行することは容易ではない。自社のビジネスと技術の両方を理解する人材、チームの組成が必要であろう。PMOの設置もその方法の一つであるし、イノベーション創出、価値創造につながるコア業務に特化するためには、アウトソーシングなど外部のリソースの活用も選択肢となりうる。

 柔軟で、先見性ある素地を持てるならば、CIOであるあなたの存在感が増す。あなたが所属する企業もさらに大きく飛躍するはずだ。ぜひ、積極的にチャレンジしてほしい。

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Message from Accenture

 アクセンチュアは従前よりIT部門の変革パートナーとして、多くのクライアント、CIOの方々と協働しているが、今ほど大きな変化が求められる時代はなかった。また、変化に呼応することが、ビジネスの成否に直結することもなかったであろう。

 ネット企業に代表されるデジタルの先端企業でITがわからない経営者はいない。ITそのものが事業なのだ。そうした企業と連携、競合していく中で、いかにCIOの比重が増していくかご理解いただけただろうか。

 企業内でCIOをどう育成していくかでは遅い。アクセンチュアに企業から寄せられる問いは、より複雑で、難しいテーマになってきている。私たちも、日々新しい取り組みを実践していくことで、よりイノベーティブな答えを提供していきたいと考えている。

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